ケーススタディ

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授業

掲載日:2024.09.03

信州大学長野(工学)キャンパスにて、プロジェクトWETを使った体験演習を実施!

信州大学長野(工学)キャンパスにて、信州大学教育学部付属長野中学校1年生向けにWETを使った防災体験演習講義が実施されました。

実施日:2024年7月11日
場所 :信州大学長野(工学)キャンパス(長野県長野市若里4-17-1)
テーマ:「水の循環と私たちの暮らしの関わり疑似体験」
主催:信州大学工学部
講師:吉谷純一 教授

水の循環と私たちの暮らしの関わり疑似体験(講師:吉谷純一教授)

①タブレットを使って、オンライン版「青い惑星」にチャレンジ

タブレットを使い、水環境プログラム「プロジェクトWET」の「青い惑星」をオンラインゲーム形式で実施しました。

生徒達は一人ずつ回転している地球の任意の場所をクリックし、「海」と「陸」がそれぞれ表示された回数をまとめ、地球の海と陸の割合を計算しました。何度やっても、同じような割合になる事に頭をかしげる中学生に対し、吉谷教授は統計学の観点から解説をしました。「大数の法則」にならい、クリック回数と海の面積割合の変化について深堀し、クリックの回数が少ない場合平均値はばらつく一方で、回数が増えると平均値が収束していくと先生は解説していました。

アクティビティ後生徒達は、さっそく習った事を実証しようと「青い惑星」ゲームにもう一度挑戦しており、非常に意欲的な姿を見せていました。

「青い惑星」オンライン
タブレット端末にて体験する生徒の様子

②「驚異の旅」 サイコロを振って水循環を体験

水は地球上でいろいろなところを動いている、という言葉を皮切りに、「水循環」に特化したアクティビティ「驚異の旅」を実施しました。

生徒たちは各テーブルに置かれたサイコロを転がし、出た目の場所に移動したり、その場にとどまったり、水になりきって循環の旅に没頭しました。なかなか抜け出せず悪戦苦闘する生徒もいれば、予想できなかった行先に驚きの声を上げる生徒、自分と他の人の旅路の違いに疑問や興味を感じる生徒、様々な反応と会話が終始飛び交っていました。

それぞれに配られたワークシートに、自分のたどった道順をシールで記録し、グループ内でなぜそのようなルートになったのか、どこが一番多かったのかを話し合っていました。その後、吉谷教授の指示でグループ毎に9つの滞在回数を集計し、滞在場所の順位付けをし、その中で海からの行先は雲になることが多いことや、水は高いところから低いところに流れる特徴があること、水循環や水の流れを考えるとき自分より少し上(高い)の方を意識すること、水の循環と自分達の生活圏の結びつきなど様々な気づきを得ていました。

各グループに「驚異の旅」のサイコロキットを配布
水の旅の経路をシールにて記録
水の旅の経路についてのふりかえり

水害時の避難行動「マイ・タイムライン模擬作成」

水の地球での割合、水の移動ルートなどを学んだ後、講義最後のセクションでは「逃げキット」「マイ・タイムライン」を通じて災害時、避難を阻害する要因を探り、どうすればもっと身近な人や他の人が避難してくれるかを考えました。

吉谷教授は、釜石市の小中学校の避難例を例に避難するとはどういう事か話し、「どうして避難できる人と、できない人がいるのか?」と問いかけました。疑問符を浮かべる生徒達に対し、吉谷教授は大人になればなるほど「正常性バイアス」が働き、過去の経験や知識から、「これぐらいだったら大丈夫」、「みんな避難していないから大丈夫」といった心理になりやすいとスライドや事例を交えて説明しました。

マイ・タイムライン模擬作成

そのうえで、冒頭で触れた「重ねるハザードマップ」を再度見て、災害危険区域や浸水地域、最大浸水深を確認し、自分や家族が災害の時どのような危険に遭うのか、いつ、どこで、どんな行動をすべきか改めて見直す必要性があること、そのために「マイ・タイムライン」の作成は普段からの対策として重要である事を強調していました。

最大浸水深を確認した際は、自分の住んでいる場所が予想より低地にあった、通学路やよく行く公園や塾などの施設が洪水の際は浸水で近寄れなくなる、自分の家は比較的高台にあり浸水の影響はあまり無い、など様々な発見があり、生徒達は不安や驚き、かたや安堵をあらわにしていました。ハザードマップの観察を通じて、「地形と洪水」の関係性をより「自分事」として認識を改める様子が印象的でした。

ハザードマップの確認
模擬作成の様子

また、避難するだけで満足するのでは十分ではないことを指摘し、避難時に何を持っていくかを何人かの生徒に質問しました。当てられた生徒は思い思いに必要と感じたものを挙げましたが、とっさにはなかなか思いつかない、準備は大事である、中々逃げようとしてくれない大人たちにどのようにアプローチすればよいか、等の感想や議論が答えた当人やグループの仲間との会話で新たに生まれました。

質疑応答の様子

最後に、「子どもの時はみなバイアスが少なく、正しい知識があれば釜石の生徒のように相応しい避難行動ができると事例で証明されているため、本日の講義を通して防災、特に早ければ数日前から予測と準備が可能な『水害』につき良く知り、学びを得てほしい」と締めくくり、講義は終了しました。

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