ケーススタディ

CASE STUDY

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授業等

掲載日:2024.08.19

小学校のクラス内で“金メダル”目指し、水リンピックで水の特性を学ぶ授業!

パリで金メダルを目指した競技が行われた2024年7月。小田原の小学校では、水の特性を生かした競技を行うユニークな授業が行われました。

実施日:2024年7月16日(火)
場所:小田原市立山王小学校
指導者:久末俊幸教諭(プロジェクトWETファシリテーター)

理科の問題解決学習の視点で、プロジェクトWETアクティビティ「水リンピック」を実施。

小学校のクラス内で“金メダル”目指し、水リンピックで水の特性を学ぶ授業!

体験を通して、「水」の特性に迫る

水の特性を使って競技を行うプロジェクトWETアクティビティ「水リンピック」

その競技の一つ、スポイトを使って1円玉に限界まで水滴を落としていく「平均台:落ちないで!」を理科授業に取り入れた実践についてのレポートです。

前単元で植物の発芽、成長に欠かせないものの一つとして、「水」を学んだ山王小学校5年生児童。今回は、理科の問題解決学習の視点で、「水リンピック」の競技を行い、体験を通して、その「水」の特性に迫ります。


 アクティビティ:水リンピック(平均台:落ちないで!)

1円玉にスポイトを使って限界まで水を落としていくWETアクティビティ。実験、予想(目標)と結果の比較、観察、考察など段階を踏み、水の特徴や表面張力の作用を学ぶとともに、結果や考察をお互いに教え合う事によって、協働的な学びを実現しました。

表面張力等の特性を使って競技を行う「水リンピック」

単元の関連付け、目標設定

アクティビティを実施する前に、授業のおさらいと関連付けをしました。

植物について学んだことは、「発芽」と「成長」があるが、どちらにも共通しているものは何か?という前時で学習した内容に関する投げかけに、「水」という答えが返ってきました。 その流れを汲み水リンピックの説明をし、実験を始めるにあたってクラス内の各班の目標設定(例:10滴など)をしました。

おさらいの様子
目標を設定する生徒達

実験

各班は3~4人で一人ずつ水滴を垂らしていき、経過や変化、各段階の特徴、水滴の量や状態を観察。教員は巡視するにとどまり、その間、児童同士の以下のような気づきの共有が行われました。

・10滴まではいきたい
・たくさん入れすぎない方が良い
・プルプルすぎる
・はみだしている
・ふくらんでいる
・机をゆらすと水が動いてこぼれやすくなる

スポイトで慎重に
熱心に観察する様子

結果・観察内容の共有

実験後、まず各班の滴数の結果が共有されました。
1班:30滴、3班:15滴、4班:37滴、5班:47滴、6班:20滴、7班:14滴
どの班も事前に設定していた目標に比べ倍、もしくは遥かに多い量であったと驚いていた様子。
次に、「状態」の観察結果について各班が発表しました。

児童のコメント

・きのこの形をしていた
・カップケーキみたい
・上にふくらんでいる
・限界を超えなければこぼれない
・はみ出している

教師のコメント

・1円玉のふちより水滴の方が大きい
・水滴がおおいかぶさっている
・上に向かって「かさ」があがっている
・なぜ限界を超えなければ大丈夫なのか?
・なぜはみ出さないのか?

各班の結果、気づき

考察

各班の結果共有のち、改めて各生徒に付箋を配布し、以下について振り返りを促しました。

・気づいたこと
・考えたこと
・不思議だなと思うこと
・印象に残っていること

その他、水にはどんな特徴があるか、この実験から分かることは何かなども考えるように教師が勧めていました。

実験を振り返る生徒
結果や気づき、考察を共有しあう生徒達

児童の気づき・感想・振り返り例

・横に出ているのにこぼれなかった
・水はこぼれづらい
・コインからはみ出ているのにコインからおちないのが不思議
・水だけならこぼれないけと、他のものが入ったらこぼれる
・はるかに多く(水滴が)のった
・1円玉よりもはるかにふくらんだ
・目標を超えたときびっくりした
・はみ出ているのにこぼれないのがすごい
・まるで重力がないみたい

まとめ

設定した目標と実際の結果の比較、また観察を通じて、「水」にまつわる様々な現象や作用を実感し、「水の特徴」を多角的な観点から学べる内容となりました。

また、見えた特徴や思いついたこと、気づきを互いに教え合うことで、視点を変えて分かったことに驚いたり、より深く、「なぜだろう?」と考える様子がみられました。

指導者(教員)の感想

単元とアクティビティとの関連について

第5学年理科「植物の発芽」では、植物の発芽や成長には水が必要であることを学びます。今回は、この理科で学ぶ内容にプラスするような形で、子どもたちに水の特性について学んでほしいと考え、単元終末に「水リンピック~競技2平均台:落ちないで!~」を実践しました。「水リンピック~競技2平均台:落ちないで!~」は、1円玉の上に何滴の水を垂らすことができるかゲーム感覚で楽しみながら水の特性について調べることができるアクティビティです。さらに、この水滴を垂らした1円玉を横から見ることで、水が盛り上がる様子や水滴同士がくっつく様子について、実感をもって理解することができます。このような実験的な要素があることも、今回このアクティビティを選んだ理由です。

授業を振り返って

プロジェクトWETのアクティビティは、基本的に小集団(グループ内)で学習する形態でデザインされています。そのため、プロジェクトWETのアクティビティを通して、児童がグループの友達と協力して「課題を見つけ、話し合い、まとめる」という一連の学習活動を進めることが可能です。今回の授業においても、児童が水の特性についてグループの友達と意見を出し合い、主体的に課題について考察する姿が見られました。

学校教育におけるプロジェクトWETの活用について

学校教育においてプロジェクトWETを活用する方法を2つご紹介します。

1つ目は、各教科の学習内容を関連させるためにプロジェクトWETを活用する方法です。例えば、第5学年では、理科「植物の発芽」において発芽や成長の必要条件として水を取り上げます。社会科「我が国の国土の様子と国民生活」において、人々は自然条件を生かして野菜や果物,花卉の栽培などの産業を営んでいること等について学習します。教科は異なりますが、「水」に着目することでこの二つの学習内容を関連付けて学ぶことが可能になります。このようにプロジェクトWETには理科だけでなく社会科の要素をもつアクティビティもあります。こうしたアクティビティを活用することでさらに「水」をテーマに学習内容の繋がりを深めることができます。

2つ目は、探究の時間に設定した学習課題に応じて、系統立ててプロジェクトWETのアクティビティを実践する方法です。豊富なプロジェクトWETのアクティビティから児童それぞれの学習課題に応じた内容を選択し、実施することができます。

久末先生
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