インタビュー

INTERVIEW

インタビュー

掲載日:2024.02.14

【指導者インタビュー】品川 明さん

環境と人との関係やその大切さを、プロジェクトWETを含む様々な体験型学習プログラムを組み込み教えておられる品川先生。同大学の「東南アジア国際協力研修プログラム」の一環として行われたプロジェクトWET講習会にて、WETに関する様々なお話を伺いました。(2023年12月16日講習会でのインタビュー時)

【PROFILE】
品川明さん
/学習院女子大学 日本文化学科/教授

<専門分野>
味覚に与える食生活の影響、二枚貝の成分含量と生態系との関わり、問いかけベースの体験型の科学教育と環境教育?教えない教育とは
<研究分野>
フードコンシャスネス教育、環境教育、食品科学、生態学、コミュニケーション
<所属学会>
日本環境教育学会・日本食育学会・日本科学教育学会・日本理科教育学会・日本生物教育学会・日本伝統食品研究会・日本水産学会・日本増養殖学会・National Marine Educator Association.

学習院女子大学 日本文化学科/教授

2007年度より学習院女子大学においてプロジェクトWET等のプログラムを取り入れた授業を展開している品川教授。近年では授業を受けた学生が、海外との国際交流プログラムにてアクティビティを活用しています。

「東南アジア国際協力研修プログラム」は海外での実体験を通して、日本や世界の現状を理解する事を大きな目的として同大学で実施されている国際交流プログラムであり、毎年多様な研修が用意されています。
研修にあたり、品川先生はプロジェクトWETを筆頭に様々な体験型学習プログラムを実施されておられ、本記事では2023年12月に同大学で開催されたプロジェクトWET講習会時のインタビュー内容を紹介します。

学習院女子大学におけるプロジェクトWETエデュケーター講習会の様子
授業の中にプロジェクトWETを取り入れようと思ったきっかけ

水の教育というものはそもそも重要であるという事と、そういった生活に欠かせない水について学ぶアクティビティがプロジェクトWETに数多く揃っていたことです。プログラム自体が水及び環境教育としてのインパクトが大きいので、大学で授業を行おうとする上で、プロジェクトWETというのはまず一番最初に取り入れたいプログラムであった、ということが主因です。

プロジェクトWETを導入した時期

もう20年近くも前だと思います。ちょうどプロジェクトWET事務局である河川財団の方がファシリテーター講習会を開催されていて、タイミングが合い、講習会を受講しました。その頃から大学で取組はじめたので、かれこれもう20年近くプロジェクトWETを活用して大学で水の教育を実施しています。

実際に授業で実施していく中で、WETプログラムの優れていると感じた点

それは、短時間で水に関する概念の獲得ができ、なおかつ気づきが大きいという点です。なかなか実感したり俯瞰して捉えられない、自然の中の生き物と自然とのつながりが、プロジェクトWETのアクティビティを通じることによって想像ができ、実感を伴いながら理解することができます。水という物質が循環の中で、形を変えながらどのような働きをしてるのか、環境が水に影響する、水が環境に影響するものは何なのかという視点で水を通じた人・生物と環境とのつながりを考えさせられます。あわせて、そうした水が循環するための原動力となる、水そのもののもつ物理的・化学的な性質やその変化を学ぶこともできます。こうした一見難しいと嫌煙されがちな事象を理解する上でプロジェクトWETは大変分かりやすく、素晴らしいアクティビティが多いというように感じています。

学生がプロジェクトWETを体験した際の感想や気付き

学生が一番気づきとして感じるのは、まずは理論ではなく体験をすることから始まり、その体験を通じて得られた自分の気づきという点を重要視しているというのが体験学習の流れなので、あまり解説は指導者側はしないんですね。それで、「気付き」を自己決定の作業とすることで、そこに至った自分自身のプロセスを認めてもらう要素になるので、やっぱり指導者側っていうのはどちらかっていうとそこの部分を重要視した方が良いですし、それがアクティビティ全体のプログラムの中で組み込まれているっていうのが素晴らしい要素だと思いますね。

講習の中で、難しい言葉を使わない「意図」

教科書において、ボキャブラリーや専門用語として例えば「密度」であれば、密度とは何であるかということを「説明」はしているんですけれども、それを「実験する」ということが教科書的にはあまりありません。という事は、密度に関する説明を我々が単に記憶すれば、「That’s All」という状況で終わってしまいます。なんですけれども、我々はそういう事を推奨するのではなく、まず実験をして、その結果が実は密度に関連する事であることをアクティビティを通じて体験してもらうことで気付きにつながります。

まずは体験して概念を理解

密度の違いそのものではなく、重いか軽いかという実感した実体験の結果をそのまま、「これとこれは重さが違う」ということは最終的に重さが違うからこういう現象になる。で、重さが違うという事は「何を意味するのか」、ということを今度は理解しようとする段階になります。その理解の段階でそういうことを密度が大きいとか、高いとか、密度が低いという視点で理解できるので、まずは「重い」と「軽い」っていうのはどういう概念であるのかということを自分の中で自己決定する要素が重要であるわけですね。

ですから、専門用語を最初から覚えるというのは、「密度」の概念をきちんと知っているわけでは無いわけです。教科書的に単語とその内容だけを記憶しているので、自分で覚えた、自分が記憶した概念として獲得したものではないのです。こうして「自分が発見した概念」と「自分が記憶した概念」では重さが全然違うんですね。

そのため、学生自らの体験を通じ、その体験から出来るだけ多くの事柄に自ら気付いくことを重視しています。自分が体験にて気付いたことをベースとして、そこから「密度」のある程度の概要を知ることの方がよっぽど重要であると考えているので、難しい言葉は一切使わないのです。

こうした研修を通じ、学生にはなるべく難しい言葉を暗記したりそのまま使ったりせず、簡単な優しい言葉で置き換えるどういう概念を示せるのか、頭を使って学んで欲しいと思っています。

水の物理的・科学的特性を用いて色の層を構成
「東南アジア国際協力プログラム」にプロジェクトWETを取り入れようと思った理由

例えば、研修先のとある国では、かなりインフラが整備されていて、すごい発展途上で素晴らしい国なんですけど、まだ水に関する、あの下水の要素とか、水の衛生的な管理なんかも含めて、まだそんなにインフラが整備されているわけでは無くて、水の教育自体もそんなにされていない事もあるんですね。

であれば、環境教育の一つの要素として「水の教育」を取り入れるのも効果的と考えました。人は、水を含めた環境と深い関わりがあり、何より「おもしろい」かどうかが重要と思っています。まずは、面白いアクティビティで体験することで、自らが得られた気づきが多ければ、それに越したことがないと考えました。

万国共通なプロジェクトWETのアクティビティそのものは、世界中の子どもたちに凄いインパクトを与えると思いますし、より鮮明に、記憶に残る体験になるという風に思っています。

プロジェクトWETを学んだ学生に望むこと

実はプロジェクトWETを学んだ学生が、JICAに応募し、JICAでの赴任国でプロジェクトWETのアクティビティを通して、我々が取り組んでいるファシリテーションと同じ様な形で地域に環境教育を広めてくれています。プロジェクトWETはもともと国際的な水教育のプログラムであり、広く世界で応用可能なものです。こうした世界で活用できるプログラムを通じ、海外に貢献する学生が多くなればさらに持続可能な社会の実現につながるんじゃないかなと思いますので、プロジェクトWETを使って世界に水の教育を発信してくれればと思います。

学習院女子大学におけるプロジェクトWET講習会に参加した生徒の声

  • まず「教育」の手法が普通の授業と全く違うと思いました。教科書に沿って進めるのが従来のスタイルだと思うのですけれども、このプロジェクトWETは生徒たちに自分たちで楽しみながら気付かせるというのが一番の違うところで、それがすごく良い教育法だと気づきました。 
  • このように水で遊んだり学んだことがないので、楽しい水の性質などを再認識できました。
  • 水がそんなに大切なものだとは、あまり深く考えたことが無かった。この授業で、水が世界でどのような役割を果たしているのか知れて大変貴重な時間となった。
  • 水を使用しているのは人間だけではなく、生きている生物が全て水を必要としていると学んだので、自分勝手に水を汚染しないようにと思いましたし、研修先でも水の大切さを伝えたいと思います。

【このインタビューページは令和5年12月の講習会でのインタビュー内容を一部抜粋・掲載しています】

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