【河川基金からのお知らせ】

ふるさとを愛する人づくり-斐伊川・神戸川流域環境マップづくり-

2018/10/15 事例紹介

NPO法人 しまね体験活動支援センター(島根県) 理事長 青木 充之 さん 事務局長 岩﨑 知久 さん

河川調査を指導する教員のための指導者研修会
 
 

活動のきっかけ


【岩﨑】 「斐伊川・神戸川流域環境マップづくり」は平成14年に、島根県中山間地域研究センターがリニューアルオープンをした時、県のモデル事業としてスタートしました。
 WEB-GIS第1号プロジェクトでもあり、今でもこのような先進的な取り組みを行っている自治体は少ないと思いますが、ネット上のWEB-GISというマップに、流域で行われた様々な環境調査データ、例えば水生生物、水質(パックテストph、COD)結果などを、GISマップに載せ、情報を重ね合わせて表示し、参照できるというシステムです。インターネットを通じて様々な団体から地図の 作成・編集が可能な「参加型マップ」として 運用しています。
 この事業に携わるきっかけは、私が佐田町の教育委員会にいたときに、流域4人の教育長に 「子ども達に流域全体の視点を持つ環境を観る目を養わせたい」という私の提案に賛同をいただき始まりました。流域の小中学校で環境調査を行うため、各教育委員会の了承は必要でした。
 理事長の青木さんは、元高校の理科の教員で、私の恩師でもあるのですが、私自身はもともと教育関係ではなく、建築設計事務所に勤めていました。もっと子ども達を自然の中で遊ばせたいという思いから、仲間と「佐田町冒険クラブ(今はない)」を立ち上げ、川遊びや登山など自然に親しむ活動を行っておりました。その時、当時の町長から教育長をやってみないかと声をかけていただき、佐田町の教育長になりました。
 

河川事務所と教育委員会との連携


【岩﨑】事業を進めるにあたって、まずは年度当初に各教育委員会や各学校に了解をとっています。各学校からは、環境マップづくりで必要な物品の希望リスト、バス代が必要なところは業者からの見積など、各学校から提出してもらいます。私どもがそれをチェックし、物品などを送っています。また先生方が調査の指導をできない場合は講師の紹介も行っています。指導は本来、学校の先生方がするのが一番ですが、それができなければ地域の中で指導者を探してくださいとお話をしています。必ず先生方には異動がありますので、例え転勤をしても事業は継続できるようにするためです。どうしても見つからない場合には講師を紹介しますので相談してくださいと伝えています。
 事業成果を発表する成果発表会で使用する出雲科学館は、設置者の教育委員会に減免申請を行い、使用料無料などのご協力を得ています。
河川事務所との連携は、河川調査の指導者研修会に参加をいただいたり、成果発表会に副所長か課長さんに来ていただき、色々なコメントをもらっています。
 国交省でも、講師の派遣から、調査道具の手配まで私たちと同様の事業を行っています。これは、学校主体で行なえるようになるためのきっかけづくりであるとの意図があるようですが、実際はなかなか難しいと思います。とにかく手間が掛かりますし、先生方は忙しすぎます。学校がそれぞれ手を挙げたら煩雑になりますけど、私たちが流域の学校を取りまとめ業務を代行することで、いわば環境教育、ふるさと教育を行なっているとの自負があります。この思いがあるから続けられているということもありますね。
 活動当初は、発表会の場所や時期もばらばらで色々試行錯誤していました。今は事業自体も洗練され、そぎ落とす部分がないぐらいに無駄のないスタイルになっていると思います。
【青木】小学校では学習指導要領で環境学習が入っており、総合学習、理科、課外活動などの時間を利用し、年間行事にこのプログラムを入れております。ただ、そのときに担任の方が環境に理解があり、校長先生が同意し初めて参加をしてもらえます。そこで理解を得られない学校は参加してもらえません。流域の学校全部が入っているわけではなく、岩﨑さんが各学校に地道にアタックをしてこれだけの学校に参加してもらいました。ここに至るまでには色々苦労もありましたね。
 

苦労している点や活動継続の秘訣


【岩﨑】もともと、このNPO法人はオールボランティア、手弁当で行なうことを原則としてスタートしています。私も正式な職業をもっているため、手が回らない部分は、他にもプロフェッショナルな方がおりますのでご協力をいただいています。
 会費と助成金だけで運営していますが、やはり資金面は苦労をしています。14年間、活動の評価をいただき続けている河川基金には大変感謝しています。
 活動継続の秘訣は、仕掛ける人間の熱意でしょうね。これに尽きると思います。個人的には、環境カウンセラーや島根県環境アドバイザーもしていて、小学校などで環境学習の講師もしています。青木さんも斐伊川などでたくさんの環境学習活動を行なっています。
 環境問題は、これからを担う子どもたちが重要な役割を果たします。地球環境問題に対する意識を持つことで、まずは子ども達が変わり、家族が変わり、そして地域が変わっていく。その原石である子どもたちへの環境教育として、ふるさとを愛する心を持ち続けることが環境を良くすることに繋がっていくと思います。自然体験不足の子どもたちに川で遊び学ぶ原体験を通して、理解と気づき、環境意識の高揚をはかるという、そこが肝だと思っています。
 その手法として川に入って水生生物による水質判定をするということが子どもたちの心に残り、原体験として財産に残っていく。その活動や思いに対してのご理解を河川財団はじめ、地域の皆様にいただいてこの活動が継続できています。
 

今後の活動の予定と目標、課題


【岩﨑】今後は国交省や県との役割を交通整理し、いかに効率よく協力して行うかです。周りの環境が変わっていく時期で、例えば県のマップ事業が来年見直し予定や、県と国交省の取組みが今後も継続していくのか、それぞれの役割分担がうまくできるのかで、来年の活動への方向性や河川基金申請書の中身も変わってくると思います。
 後継者問題は良く聞かれますが、会員に学校の先生など若い人たちが何人かいるので、事業の交通整理をして引き継ぎたいですけど、あと5年は頑張らないといけないかなと。ね、理事長(笑)
【青木】なかなか後継者は難しいですよね。
【岩﨑】河川基金に望むことですが、助成金は申請をした組織に出されますが、その先にいる子供たちに目を向けて欲しいです。助成内容は変わらないとしても、毎年変わる新たな子どもたちに向けて、助成金採択の判断をしていただきたいです。




 
NPO法人しまね体験活動支援センター事業概要

斐伊川・神戸川流域の児童・生徒が、国土交通省や地域の支援を受けて、水生昆虫調査による水質判定などの河川調査を行い、その結果を島根県及び島根県中山間地域研究センターのWeb-GISで一つにまとめ、流域全体の河川環境を把握できるようにしています。また、調査結果は蓄積されていくので、過去の環境と比較することができる、他の自治体ではあまり見られない先進的な取り組みを行っています。

(写真 右)
青木 充之 Mitsuyuki AOKI

NPO法人 しまね体験活動支援センター 理事長
1937年生まれ、出雲市出身、高校生物科教師、同校長、自然観察指導員(昭和47年~)、島根自然保護協会会長(平成26年~)、島根県自然解説員、島根県自然保護レンジャー

(写真 左)
岩﨑 知久 Tomohisa IWASAKI

NPO法人 しまね体験活動支援センター 事務局長
1954年生まれ、出雲市出身、会社員、自然観察指導員(昭和61年~)、島根自然保護協会運営委員(平成元年~)、環境省環境カウンセラー(平成9年~)、島根県しまね環境アドバイザー(平成15年~)、出雲市環境審議会委員(平成24年~)