【河川基金からのお知らせ】

本物を肌で感じる経験が確実に子どもたちの学びを深める

2018/10/15 事例紹介

津田学園小学校(三重県) 校長  岡田 浩一 さん 教諭  小松 拓磨さん 教諭  門脇 彩加 さん
株式会社東産業(三重県) CSV課 係長 榊枝 正史さん 虎田 杏さん

津田学園小学校の「実体験を重視した体験学習」
 
 

津田学園小学校の体験活動


 三重県桑名市にある津田学園小学校の河川教育は、学校教育の新たな方向性を模索しながら取り組みを行っています。体験活動は学校の核となる学習として位置付け、特に水と空気は一番身近な環境として豊かな自然環境の中、「水辺の環境教育」を10年程続けています。
 また、開校当初から教育方針の柱である「実体験を重視した体験学習」を元に実体験を取り入れた授業を行っています。緑豊かな自然に囲まれた立地条件を活かし、各学年ごとに様々な農作物を栽培し調理したり、昆虫を飼育することで「人と自然との関わり」や「人と農との関わり」などについて体験を通して学びます。

 1年生は海の学校(干潟で潮干狩りや生き物の観察)、3年生からは山の学校(マスの調理体験)や汐の学校(塩作りや磯の観察)、雪の学校(冬山の自然観察)など、学年に応じた体験活動を取り入れるとともに、理科、生活科などの授業では体験しながら学習できるよう心掛けています。

 体験学習を進めていく中でも、特に「環境教育」は外せない課題でした。河川や海にかかわることも農業や食にかかわることも、すべて環境を守ることが大きなテーマとなりました。環境教育は学校だけで進めていては学びが深まらないことを感じていたため、当初は嘉例川みどりネットワークの方をはじめとする地域の皆様からの協力をいただきながら進めていました。さらにサポートの輪が広がり、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの方や、漁業関係者、そして近年は東産業さんにお手伝いをいただきながら充実した体験学習を進めることができています。近年の教育の流れとして学校、保護者、地域などの外部の方が関わって共に教育に携われるのは子どもたちにとっても幸せなこと、心から感謝しています。
 

ビオトープを使った授業


 以前は嘉例川へ足を運びましたが、もっと身近に自然に触れ合う場があればと思い、校庭にビオトープをつくりました。ビオトープといっても元々沢だったところに穴を掘りこしらえた簡易なものですが、理科や生活科の授業の他、子どもたちは休憩時間もトンボを捕まえるなど自由に遊んでいます。
 4年理科の授業ではそのビオトープで環境の調査として生き物の観察を行います。
 4年生からビオトープで自然や生き物に親しんできた生徒たちにとっては、この授業は待ち遠しくて仕方がないようです。
 生き物探しの東産業 榊枝さんのお話を教室で聞きます。どんな生き物がどこに生息しているのか、生き物観察の仕方を学び、鳴き声、足跡、フン、何を餌にしているのか?等様々な手がかりがあることを確認し体験学習に向けての導入を行います。また、蜂やマムシの行動パターンも紹介され、危険な生物への対応も学びます。いよいよ班ごとに分かれて生き物探しの始まりです。始まるとすぐに子どもたちのにぎやかな声が聞こえてきました。1年生から自然と触れ合える環境にいるからでしょうか、周りを見渡すと誰一人として生き物を怖がる子どもはいません。次々に捕まえた生き物を見せてくれました。目で見て、触れて、感じることで子どもたちの好奇心を揺さぶる実体験を取り入れた環境教育がここにはありました。
 

体験学習の評価の検証


 体験学習を何年も実践してきましたが、子どもたちの学びがどのように深まっているのかという検証が不足していた面が否めませんでした。つまり評価がないがしろにされていたということです。教師の主観もかなり的確な評価方法ではありますが、担当教師が代わると基準も変わってしまいなかなか使いにくいのも事実。何かよい評価方法はないものかと三重大学教授 荻原彰先生にご相談させていただきました。ご紹介いただいた評価方法はSD法(セマンティック・ディファレンシャル法)というもので、形容詞の対を用い、感情的なイメージを5段階あるいは7段階の尺度で子ども自身が自己評価する方法です。授業前と授業後の二回、子どもたちの自己評価を比較して、水辺の生き物に対する感じ方がどう変わったかというのを評価していきます。具体的には、水辺の生き物に対する感じ方だけではなく、その活動自体がわくわくしたか、楽しかったか等の活動それ自体の評価も項目に加えます。それも形容詞で三つの比較で行うプロセスの評価です。
 また、1枚ポートフォリオというシートを使い、子どもたちが最初の授業と最後の授業で同じ質問をすることで、子どもたちの答え方がどう変化したかをみていきます。例えば「この授業で一番大切なことはなんですか?」と質問を投げかけ、質問の答え方の変化で認知的な成長を見ていきます。子どもは代わっていきますが、毎年4年生の子ども達に対して行い、データを蓄積、分析することで活動をブラッシュアップしていければと考えています。
 

本物に触れる教育


 近年の学校教育の流れとして、保護者、地域の方、大学の先生や河川財団のような外部の方に子どもたちの教育に関わっていただくことが多くなりつつあります。
 津田学園小学校が実体験を重視した教育を行うのは、6年間の子どもたちの成長を振り返ったときに実体験に勝る学びはないと強く感じるところからです。
 当校の取り組みの一つとして、先日は弁理士さんに来校いただき知的財産権について子どもたちへお話をしてくださいました。小学生へ知的財産権について教えることは教師でもできますが、敢えて専門家の方が教えてくれることが、子どもたちの心に強く残ります。これも実体験の一つで、多くの専門家から話を聞く機会を設けています。。
 そんな時の子どもたちの目は生き生きしています。そして専門家から話を聞くことはキャリア教育にもつながります。子どもたちが「本物」に接することで、興味関心や憧れを抱き、学習意欲にも繋がっていくことは我々教師も実感しています。実体験を伴った学習は驚くほど素直に子どもたちへストンと落ちていきます。その反面、受け身の学習を定着させることは困難に感じています。環境教育も同じことが言えます。教室での学びも必要ですが、本物を肌で感じる経験は確実に子どもたちの学びを深めます。
 

今後の活動


 今後の学校教育については、将来的には先生の役割はコーディネーター的な側面がかなり大きくなっていくと思っています。文科省も社会に開かれた学校をコンセプトとして打ち出しており、益々地域の力を学校に取り入れた教育を目指すことになります。また学校も地域の持続可能性を促進させるために積極的に関われるよう、新たな時代に合った学校体制を整備していく必要があります。先駆けて津田学園が取り組んでいる協同の環境教育は、今後様々な教科へと広がりを持たせ発展させていければと考えています。








 
津田学園小学校の取組み

近くに嘉例川が流れる津田学園小学校は、緑豊かな恵まれた環境を活かして様々な体験活動に力を入れています。学年毎に米・トマト・イチゴ・サツマイモなどの様々な農作物を栽培し、昆虫の飼育や観察を通してその生態や地域の自然を肌で学んでいます。実体験を重視した教育で本質的な学びを追求しています。

(写真 中央)
岡田 浩一 Koichi OKADA

津田学園小学校 校長
三重県四日市市出身
平成28年から津田学園小学校の校長に就任。

(写真 右から2番目)
小松 拓磨 Takuma KOMATSU

津田学園小学校 教諭
長野県諏訪市出身
津田学園小学校は今年から勤務。

(写真 右から1番目)
門脇 彩加 Ayaka KADOWAKI

津田学園小学校 教諭
三重県四日市市出身
津田学園小学校は6年勤務。

(写真 左から2番目)
榊枝 正史 Masafumi SAKAKIEDA

株式会社東産業 CSV課 係長
三重県四日市市出身。CSV事業の前身事業発足から8年間携っている。
出前授業などを通して平成25年から津田学園小学校の環境教育をサポートしている。

(写真 左から1番目)
虎田 杏 ANN TORADA

株式会社東産業 CSV課
奈良県生駒市出身。平成24年4月に株式会社東産業に入社。
今年度からCSV業務と事務を兼任。イラストやデザイン技術を活かし、活動の記録やSNS管理を担当している。