【河川基金からのお知らせ】

総合と教科とのクロスカリキュラムが、深い学びに

2018/05/28 事例紹介

東北町立甲地小学校(青森県) 校長 工藤 克己 さん    教頭 千葉 奈緒子 さん   教諭 松嶋 幸湖 さん    教諭 澤目 路子 さん
小川原湖自然楽校(青森県)  代表 相馬 孝 さん
 



小川原湖でのカヌー体験

 

河川基金申請のきっかけ


【松嶋】 河川教育は、私が甲地小学校に赴任した平成22年頃には、土場川土地改良区からの支援で、5・6年生が、水質、生態調査のガサガサ(水生生物の採取活動)を行っていました。でも、子どもたちの体験活動を学習に結びつけ、今のように子どもたちが疑問を持ち、課題を追及、探究するまでには至らず、受身的な体験活動にとどまっていました。
3年前の平成27年に、小川原湖自然楽校の相馬さんに、川での体験活動の指導支援に加わって頂きました。ちょうど河川教育の取組を再検討していた時だったので、相馬さんから河川基金の話を聞いて、川の体験活動を各学年につなげられるように私が計画を作成し、平成28年度の河川基金の申請をしました。
【相馬】 甲地小学校は地域に豊かな自然があり、水に関する環境教育にも取り組んでいたので、河川基金があれば色々な活動が出来て幅が広がると、環境教育に熱心な松嶋先生をそそのかしました。(笑)
【松嶋】 河川基金に申請することで、子どもたちが探究心を持てるようにする学びの計画、目標、取り組み方を改めて考えるきっかけになりました。
 

テーマを統一してのチャレンジ

【松嶋】 平成28年度の活動内容として、4年生は「地域の川を知る」というテーマで、高瀬川の源流や灌漑用の天間ダム、学区内にある土場川の揚排水機場や用水施設等の見学に行っています。5年生は生き物調査をメインとして、ガサガサを行っています。4年生で「地域の川を知る」を取り上げたいきさつは、社会科で地域のことを勉強するので、他教科とも関連させていけると考えたからです。実は平成28年度のアドバンス申請は4年生と5年生の2学年となっていますが、実際は6年生も合わせて3学年で行いました。ですから、平成29年度には前年度の成果を活かし、3学年分の申請をしました。
平成28年度は「水のふるさと探検隊」「土場川生き物調査」でしたが、平成29年度には「甲地あおぞら水族館2017」とテーマを変えました。基本的な活動内容は変わらず、ビオトープが加わりました。このビオトープは、高瀬川河川事務所の小川原湖水質浄化施設(ヨシ原植栽)跡地を利用したものです。
【相馬】 そのことについては、平成27年度頃に高瀬川河川事務所から、私に跡地の活用について相談がありました。河川事務所は河川教育の協力団体にもなっており、私とも良い関係を築いてきたのでそのようなお話を頂けたものと思います。ですから、平成27年度に更地にしてビオトープとして整備していただき、平成28年度から甲地小学校の体験活動で利用させてもらっています。
【松嶋】 また、その頃土場川土地改良区の方から、「今までガサガサを行っていた地域が、圃場整備で埋められてしまうかもしれない。」と聞かされていました。平成28年度に活動する際、子どもたちが、そこに生息している貴重な絶滅危惧種を保護したいという気持ちが湧きはじめていた時、相馬先生から、高瀬川河川事務所がビオトープの基礎工事をしてくれるというお話を聞きました。そこで、まず、5年生が、絶滅危惧種を移動させて観察するためのビオトープの環境をどのように整えたらいいか考えました。そして、6年生が実際の作業に入り、環境を整えるには葦や水草の種類を増やした方がいいとか、ビオトープの深さや大きさまで考えて整備しました。そして、最後に合同の発表会を行い、6年生が活動してまとめたことから5年生に要望と提案をしました。それを受けて、5年生が、次の年に6年生になったらまた考え実践していく…というような、つながりをもった活動が実際にできたので、これからもこのサイクルは大事にしたいと思っています。
 

教科との関連

【澤目】 各教科との関連も意識しています。例えば4年生では、社会の「水はどこから」という単元で、自分たちが飲んでいる水がどこからどのようにしてやってくるのかを学びますが、あくまで教科書でのお話です。総合的な学習の時間(以下、「総合」と略す)を使って、高瀬川の源流や関連施設を見ることで、教科書での知識と体験や経験が、強く結びつくと思います。
 また、5年生では、社会の「低い土地のくらし」で輪中の学習をします。かつて、土場川流域にも低い土地があり、大雨が降ると川の水が増水して浸水していたそうです。なので、教科書での学習の後に、20年くらい前の浸水の様子を学習したり、土場川の水量を調整する揚排水機場の見学をしたりすることで、教科書で学習したことを自分の地域のこととして捉えることができます。
 6年生では、国語で「どのような未来にしたいか」意見文を書く学習をします。今年度は、たくさんの児童が自然を題材にして書いていましたが、その多くは「総合」の体験活動が動機となっていたようです。また、理科の「水溶液の性質」では、酸性とアルカリ性について学びますが、強い酸やアルカリ性はものを溶かす性質があることを知り、5年生の頃に土場川で水質調査を行った時の経験と結びつけ、理解を深められることにもつながります。
【千葉】 4年生の社会では「谷に囲まれた大地に水を引く」という単元があり、地域の中には先人たちが苦労して作った用水の施設がまだ残っています。「総合」で、現地見学して本物に触れるということで、教科との関連を持たせた学習ができるようにしています。
 「総合」の指導の場合、与えすぎは子どもの気づきや探究心をつんでしまいますので、先生の指導次第で子どもの伸び方が全然違ってきます。社会や理科の他に、算数の力も必要ですし、道徳との関連では感謝や思いやりが育ちます。「総合」は、全てを網羅できる貴重な学習だと思います。ただ今後は、「総合」の時間を削って外国語学習を増やすなどして学習時間に制限がかかるので、学校全体で、全体計画等をもう一度精査していかなければならないと思っています。
 

河川教育での活動の課題

【千葉】 ビオトープの水草調査や、小川原湖、土場川の水草調査などのためにカヌー体験も行っているため、安全面での配慮が課題です。教員側も、川の体験活動のための指導者講習会等を受けるなど、専門的な知識を身に付けていかないといけないですね。
【松嶋】 指導する上では、子どもたちの中で、疑問と探究がずっと行き来するようになることを目指しています。子どもたちの思考をつなげていくために、私たちがどのように関わり、指導・アドバイスしていくことができるかが課題だと思っています。
【澤目】 河川基金の河川教育研究交流会に参加をして、青森での川に入れる時期の短さに気づかされました。私たちは7・8月までしか川に入れないのですが、他の地域では9月まで川に入ることができ、活動内容が充実して驚きました。川に入れない時期のプログラム作りが必要だと感じました。教科学習と絡めて活かせたらと思いました。
 

NPОや河川事務所、地域との連携

【松嶋】 高瀬川河川事務所の出前講座は、お願いをして来て頂きました。以前は、ガサガサをしても地域の生物を調べるすべがなく、ネットで調べて覚えるだけでした。私たちがいくら説明しても、やっぱり専門的な知識と経験のあるプロの方々にはかないません。子どもたちのモチベーションも全然違いますからね。(笑)
【澤目】 国土交通省の方たちが造ったビオトープを使っているので、出前講座に来て頂いたことでお互いに顔を合わせる事が出来て良かったです。生き物については相馬さんに教えて頂き、地域の大人たちが自分たちの活動を支えてくれていることを子どもたちが知るきっかけになったこともよかったと思います。
 

今後に向けて

【松嶋】 ガサガサなどの河川活動をしてから、子どもたちは地域の生き物に対して興味をもつようになりました。また、カヌー体験をしたときは、「景色がきれい。」「ここに生まれて良かった。」と言う子もいて、自分の住む地域に対して愛着をもつようになりました。やはり、本物に触れると心が豊かになると実感しています。
以前は、体験するだけで終わっていたのですが、平成28年度から計画を見直し、何が得られたのか学習成果を発表しようと、活動のまとめ時期の12月に、高瀬川河川事務所、小川原湖自然学校、土場川土地改良区、甲地水土里保全会、そして保護者を学校に招いて、成果発表会を行いました。さらに、5・6年生の発表を4年生にも見学させました。そうすることにより4年生は次年度の予習が出来、実際5年生になって活動する際、より質の高い活動ができると期待できます。
【松嶋】 最初は、私一人で立てた計画も、今では学校全体で取り組めるようになり、とても達成感を感じています。今後は、4、5、6年生の縦、横のつながりをより精査し、4年生は地域の川を知り、5年生は生き物に目を向け、6年生は小川原湖の環境として総合的に捉えていく……。つまり、「環境と私たちの生活」というテーマにつながるように計画を練り直し、取り組んで行くつもりです。
 平成30年度の河川基金の申請はしていませんが、今までの活動を改善しながら続けていきます。そして、平成31年度には、それまでの経験と実績を活かしてもっといい計画が出来ると思うので、また申請したいです。私たちは転勤族なので、学校の体制を作り、後輩を育てていかないといけません。他校の若い先生が基金の研究発表会でポスターセッションを行っていた姿を見て、自分だけが全て背負うのではなく、後を見据えて若手を育成していく体制作りが大事だと強く感じました。






 
甲地小学校の河川教育への取組

甲地小学校は「宝の湖」といわれる小川原湖付近に位置し、高瀬川水系の河川が周囲にある自然豊かな環境に囲まれている。平成28年度河川基金助成事業「学校部門」優秀成果校として表彰、平成29年には「東北・水すまし大賞」(主催:日本水環境学会)を受賞するなど、水環境保全等でも高い評価を得ている。

(写真 前列右)
工藤 克己 Katsumi KUDO

東北町立甲地小学校 校長
青森県弘前市出身
校長として最初の赴任校。初めて体験する河川教育に魅了され、先生方と共に様々な活動に奮励している。

(写真 前列中央)
松嶋 幸湖 Sachiko MATSUSHIMA

東北町立甲地小学校 教諭
青森県七戸町出身
甲地小学校に7年間勤務し、河川教育の中心として活躍。今年度、研修主任となり、河川教育のより一層の充実に取り組み、その成果が評価され優秀成果校に選出された。
 

(写真 前列左)
澤目 路子 Michiko SAWAME

東北町立甲地小学校 教諭
青森県横浜町出身
甲地小学校は2年間勤務。今年度、松嶋研修主任と共に高学年児童を担当し、常に協力しあい河川教育推進のため尽力。
 

(写真 後列左)
千葉 奈緒子 Naoko CHIBA

東北町立甲地小学校 教頭
甲地小学校に4年間勤務し、赴任当初から河川教育に関わり、学習活動をバックアップ。日本水環境学会の「東北水すまし賞」受賞にも貢献。
 

(写真 後列右)
相馬 孝 Takashi SOMA

小川原湖自然楽校 代表
青森県弘前市出身
甲地小学校の河川教育に対し、多大な影響を与えてきたアドバイザー的存在。