【河川基金からのお知らせ】

この笑顔に会いたくて

2017/09/30 事例紹介

NPО法人 暮らし・つながる森里川海(神奈川県) 理事長 臼井 勝之 さん


この笑顔に会いたくて、毎年、熱中おじさんになってしまいます(臼井 勝之さん)


 自然が戻れば、子どもたちが遊びに来ると思っていましたが、遊び声が聞こえてきませんでした。子どもたちの自然離れが進んでいることを危惧し、環境学習活動をはじめて17年。今では会員数も100名を超え、年間40回近くの活動を開催しています。
 

活動をはじめたきっかけ


 私自身、1975年から相模川河口の自然を守る会で干潟の保護運動に取り組んできました。当時、潮が引くと広さ5ヘクタールほどの干潟ができ、ゴカイやヤマトオサガニなど、多数の底生生物が生息していました。それを食べに渡り鳥が多数渡来しました。
 1996年の時点で196種類もの野鳥が記録された貴重な場でしたが、海岸線の侵食により、干潟面積が減少し、潮が引いても干潟が出なくなってしまいました。いつかの復活を夢に見て代替地を探し、見つけたのが今の「馬入の水辺の楽校」の場所でした。

 馬入水辺の楽校は2001年4月に開校しました。国土交通省の水辺の楽校プロジェクトに平塚市が参画し、市民との協働活動により生まれました。
 当時、河川敷の大部分は駐車場で、カチカチに踏み固められていました。不法投機や不法耕作が横行し、市民が安心して訪れることのできる場所ではありませんでした。
 川の自然と触れ合える場にしようと、原っぱやトンボ池、ワンドなど、水辺の自然環境を復元しました。17年経った今、県の準絶滅危惧種であるカヤネズミが生息するなど、相模川でも有数の生物のホットスポットに生まれ変わりました。
 

活動を継続していくために


 参加者を増やすためには、活動の魅力度をアップさせることが重要です。活動が楽しくなくては、人は集まりません。企画に際しては「自分達が面白いと思うこと」が第一条件です。つまらないと思うことは人に勧められません。知恵を絞って企画します。例えば、お魚調べでは「川魚を食べる」など、催しに一工夫いれています。
 子どもの頃、大人も子供も、シジミやウナギやドジョウなどを獲りに川に行きました。食べるためにです。そのことを思い出し、企画しました。
 まだ試行的な取り組みですが、お魚を獲って、調べて、さばいて、食べる。これが大好評でした。ナマズやヌマチチブ、マハゼなどを用意しました。こんなに食べきれるかなと思うほどの量でありましたが、完食しました。川との距離がグット縮まったと感じました。
 心がけているのが知識の押し売りはしないこと。私たちの役割は自然発見、自然体験のサポートをすることにあると思っています。いっしょに驚きを体感することが重要だと思っています。
 もう一つ、私たちは参加者をお客様扱いしません。以前は上げ膳、据え膳で対応してきましたが、真の市民活動にならないことから、現在では、会場の設営から片付けまで一緒に行い、自分ごととして参加し、自然に向き合ってもらうようにしています。結果として、主体的に参加してくれる人が増え、「私の水辺の楽校」という意識が芽生えてきました。人と人とのつながりも深まり、街の中で「こんにちは」と挨拶していただけるようになりました。
 私は活動が終了すると毎回、河川財団のホームページに活動報告を投稿しています。活動の振り返りにつながり、より良いプログラムづくりにつながります。年間活動報告書も苦労なく作れますので、お勧めです。
 

「NPО法人暮らしつながる森里川海」としてのスタート


 子どもたちや都市住民の自然離れが進んでいます。子どもたちを野に戻そうと多様な取り組みを展開していますが、一隅を照らすことはできていても、本質的な解決には至っていません。学校教育との連携等、地域一体となった取り組みが必要と思っています。
 運営態勢の強化も課題です。幹事の高齢化が進み、担い手の育成が急務になっています。
 こうしたことから、馬入水辺の楽校から一歩、外に踏み出し、法人化を図ることにしました。
 「素敵な未来を子どもたちへ」を合言葉に、生き物と共存したまちづくり、子どもたちを野に戻す取り組み、農業振興による里山環境の保全、暮らしの質を高める取り組み、ネットワークづくりに取り組んでいきます。5月22日に設立したばかりですが、他団体や大学との連携が始まるなど、スタート良しです。ハードルは低くはありませんが、乗り越えることで一歩前進できると思っています。応援よろしくお願いいたします。




【1】原っぱは野遊びの天国です。滑り台やブランコ等の遊び用具は要りません。クズのつる1本あればいいのです。熱中縄跳びの始まりです。

【2】原っぱのオギを刈って束ねて立てるとアメリカインデイアンのテント、ティピーが出来上がります。中で食べるお弁当が美味しい!壊すのが惜しいくらいの我が家が出来上がります。

【3】「フォーラムトンボの棲むまちづくり」を組織し、トンボ調査を実施しています。目標は生物多様性地域戦略の策定。トンボ調査を通じて子どもたちを野に戻すことも目的の一つ。

【4】 子どもたち自身がトンボやヤゴを図鑑で調べられるよう、「ひらつかトンボ入門図鑑」を発行。初心者が見てもわかりやすい図鑑を作ろうと皆さんにご協力いただき完成しました。

【5】 「大人もハマる、草笛教室」ほんの少しの工夫で音が出せるようになります。ピーと鳴った瞬間の笑顔、何回見ても見飽きません。

【6】 毎年恒例の「ヤギ島探検ツアー」。以前、ヤギが放たれていたことからそう呼んでいます。大潮の干潮時に歩いて渡れる冒険の島(中州)。ライフジャケットの使い方を学び、魚捕りを楽しみました。今年も100人余りの参加者が集まり、川に子どもたちの歓声が響き渡りました。





 
NPO法人 暮らし・つながる森里川海 における取り組み

 馬入水辺の楽校は川の自然と触れ合える場を作ろうと、駐車場や不法投棄などが行われていた場所の自然環境を復元しました。オープンから、16年が経過し、豊かな自然環境が戻りました。子供達の遊び声が聞こえてこないなど、都市住民や子供達の自然離れが進んでいることを受け、川の自然楽校や野遊びの秋祭り、やぎ島探検や農業体験など、多様な環境学習活動を展開しています。また、地域の環境学習活動の拠点に育てようと、自然観察路の整備にも取り組んでいます。「休日の日にはどこかの団体が何かしらの環境学習活動を実施している」そんな楽校になることをめざしています。

ShonanIkimonoGakkou.wordpress.com(10月下旬開設予定)

臼井 勝之 Katsuyuki USUI

NPO法人 暮らしつながる森里川海 理事長
(呼称:湘南いきもの楽校)


神奈川県平塚市出身。幼少のみぎり、原っぱ大学校を卒業(先生:シートン動物記、近所のガキ大将)。長じて、日本野鳥の会入会、法政大学野鳥研究会を創設(現在、消滅) 1975年 相模川河口の自然を守る会事務局として干潟の保護運動を展開。2001年 馬入水辺の楽校の会入会(現、NPO法人 暮らし・つながる森里川海)。片手に鍬、片手に双眼鏡をぶら下げ、脱サラ有機農業に励みながら、生き物と共存したまちづくり、子どもたちを野に戻す取り組みに奮闘中。

新しいまちづくりの活動拠点「暮らしの家おきなや」にて
写真左) 会員 山本 達也 さん  写真右) 理事長 臼井 勝之 さん