【河川基金からのお知らせ】

未来へ繋ぐ、命を守る防災教育

2017/04/24 事例紹介

NPO法人 気象キャスターネットワーク(東京都)  事務局職員 水越 祐一 さん


 

授業内容の変容~地球温暖化から防災教育へ~


 気象キャスターネットワークは、気象キャスターや気象予報士が気象や環境、防災の普及・啓発活動を行うことや、気象キャスターの育成、支援を行うことを目的に、2004年に設立されました。次世代を担う子ども達へ夢と希望を与えるような環境・気象教育を目指して、地球環境問題の解決と気象災害の軽減のための啓発活動を実施しています。
 具体的には、地球温暖化や防災をテーマとした出前授業、子ども向けの気象や環境、防災のイベントや講座、環境問題や防災をテーマとした講演や企業研修会、気象キャスターや気象予報士のスキルアップ研修会などを行なっています。
 出前授業は設立当初から行なっており、開始当初は主に地球温暖化問題についての出前授業を多く行っていました。2011年の東日本大震災以降、防災への関心が一気に高まり、当会の中でも気象防災の普及活動をより多く行おうという機運が高まりました。1校でも多く授業を開催したいと思い基金に応募をし、そのおかげで現在では年間20校の河川防災普及を目的とした出前授業を実施しています。
 

楽しく学ぶ防災出前授業


 河川防災についての出前授業は各45分の2コマで行なっています。
 前半は、ゲリラ豪雨、雷、竜巻など突然発生する気象災害に対する防災を学びます。最近では、ゲリラ豪雨などの急な大雨が毎年のように発生するようになり、河川の急な増水などによる水難事故が増えています、このような災害では、危険に気がついた時にすぐに逃げる意識を持つことが大切です。自分の安全を自分で守るために、どのような前兆現象に注意し、どのような行動を取るべきかを、しっかり学べるカリキュラムになっています。
 後半は、大雨や台風による河川のはん濫や土砂災害など、もう少し長い時間にわたって発生する気象災害を取り上げています。このような災害では、どのように情報を把握し、どのような行動を選択するかが大切です。ここでは、グループで話し合うワークショップを行っています。グループを一つの家族と想定して、それぞれ川の近くに住んでいるか、山の近くに住んでいるか、家族構成はどのようになっているか、マンションに住んでいるか、一戸建てか、などの設定を決めます。そして、勢力の強い台風が直撃し、これまで経験したことのないような大雨になる恐れがあるといったシチュエーションで、様々な防災情報が発信される中で、いつ、どこに避難するかを考え、話し合ってもらいます。
 防災では、いざという時のことを事前に考え、話し合うことが、とても重要です。子ども達には、避難方法には正解、不正解はなく、ワークショップで考えてもらったこと自体が大切なのだと話しています。
 

地域性や具体的な事例で学ぶ授業内容


 出前授業の内容は毎年ブラッシュアップをしています。取り上げる気象災害は、子ども達がニュースで見て覚えているような、なるべく最近発生した事例をいち早く取り上げて、関心を持ってもらえるように心がけています。また、河川管理者とも連携をし、河川管理の観点からみた防災情報、防災関する映像、資料、データ等で最新情報を授業に反映させています。
 ワークショップについても、どのような形式が効果的なのかを考えて試行錯誤を続けています。以前は自分たちの住んでいる地域にどのような危険があるか知ってもらうために、地図に色を塗ってハザードマップを作る形式で行っていました。しかし、子ども達が話し合ったり考えたりする場面をより多くするために、大雨の避難のシミュレーションの形式に変えました。さらに、シチュエーションを自分たちの住んでいる地域に設定し、地域の危険をハザードマップで考えながらのシミュレーションの形式も行っています。学年によって情報を整理する力や、地図の読解力に差があることから、対象の学年に適した方法を選ぶことも大切と考えています。

 出前授業を行なう学校はこちらで選定するのではなく、公募をして学校から申込みをいただいています。募集方法は、イベントなどでのチラシ配布や、ホームページで告知をしています。毎年恒例の授業として定着している学校も多いです。
 講師は、開催する地域をよく知っている地元のキャスターや会員が担当しています。子ども達がテレビで見たことがあるようなキャスターだと親近感が沸きますし、地域を良く知っているので、より身近な話題を取り上げ、実感のこもった話をすることが出来ます。

 

親子で学ぶ防災教室も開催


 助成をいただいての活動では、河川管理の関連施設で、幼児や小学校低学年を対象とした子ども向け防災イベントも行っています。親子で参加をしていただく子ども向けのイベントでは、小さいお子さんが多いので、クイズや実験、例えば綿を使って雲の図鑑を作るような工作など、体験型で楽しんでもらえる企画を多くしています。お天気や防災を楽しみながら知ってもらうことを重点にプログラムを組み立てています。


 

気象キャスターネットワークが担う防災教育


 近年、毎年のように大きな気象災害が発生しています。一昨年は関東・東北豪雨があり、茨城県常総市の鬼怒川の決壊など大きな被害が出てしまいました。昨年も、台風10号により岩手県や北海道で川のはん濫や土砂災害の被害がありました。昨年の台風10号は、南海上に南下した後にUターンして北上、統計史上初めて岩手県に上陸するなど、これまでにないコースを通りました。普段雨の少ない地方で大雨となったために被害が大きくなりました。このように、最近の気象災害は、これまでの想定を覆すような事例が増えています。災害への備えやいざという時の避難も、これまでの想定を超える事態を考える必要があります。多くの方に防災についての知識と意識を持ってもらうことが重要になってきており、普及・啓発活動の重要性も増していると感じています。
 また、定期的に国土交通省の方や気象庁の方も交え勉強会をしており、課題の検討や最前線での情報を得て授業やイベントに反映をさせています。出前授業で子どもたちに防災について考えてもらう機会を持ち、それをきっかけに子どもが家庭で親に伝え、家族でどうすべきかを考えて話し合い、そこからさらに地域で取り組めることはないかと考える、といった具合に防災意識が子どもから家庭に、そして社会へと広がっていくような授業にすることが目標です。
 気象キャスターも防災教育を普及していく中で、未来へ繋ぐ大きな目標の一端を担っていくという強い気持ちをもって取り組んでいきたいです。

 授業を行った小学校から感想文を頂くこともあり、気象について考えてもらうきっかけ作りが出来たと、やりがいを感じます。今後も新たなる気付きを与えられたらいいですね。



 
NPO法人 気象キャスターネットワークにおける取り組み

 地球温暖化から防災教育へと関心が高まる中、あらゆる気象災害に対する子どもたちの防災への意識を高める活動として小学校の出前講座と親子イベントなどを開催。未曾有の災害が多発する中で、自ら考え、どのように行動すべきか、現場で活躍する気象キャスターや気象予報士が講師となり、国土交通省とも連携し、最新の情報を交えた実践的河川防災教育を目的とした出前授業の内容が評価されています。
 募集対象は小学校5、6年生で募集校数は全国20校。実施期間は例年5月~2月となっています。

水越 祐一 Yuichi MIZUKOSHI

NPO法人気象キャスターネットワーク
気象予報士、防災士


神奈川県横須賀市出身
京都大学大学院理学研究科修士課程 修了
1998年~2008年 関西テレビ、NHK大阪放送局などで気象キャスターを担当。
NPO法人気象キャスターネットワークでは、主に子ども向けのイベントや出前授業などの企画、運営、資料制作を担当。
また身近な天気の話題や防災、地球温暖化などをテーマに講演を行っている。