【河川基金からのお知らせ】

クロスカリキュラムで行う「はつしばスタイル」河川教育

2016/04/21 事例紹介

学校法人 はつしば学園小学校(大阪府) 教諭 橘 淳治 さん


 

個性を育み、未来をカタチに


  はつしば学園小学校は2003年に創立された新しい学校であり、「個性を育み、未来をカタチに」を合言葉に時代のさきがけとなる教育活動に力を注いでいます。
 本校の近くには、大和川水系西除川・東除川の治水のための狭山池ダムをはじめ、多くのため池があります。河川教育導入のきっかけは、やはり狭山池ダムをはじめとした水辺の存在が一番大きいです。本校では「幅広い体験学習」を教育の柱の一つに掲げており、最初は近くにある狭山池で軽く遊ばせてみようというものでした。例えば低学年では、狭山池の水辺でお花摘みをしたり四葉のクローバー探しをしたりしました。
 

クロスカリキュラム的な河川教育への発展


 最初は狭山池の水辺で遊んだり水に触れたりといった体験的な学習からはじまり、その次のステップとして、河川教育と各教科教育との関連性を徐々につけていきました。
 低学年の生活科では、街並み探検等を通して地域の水環境、特に親水公園等の水辺とそこに棲息する生物に親しみを持たせるようにしています。
 また3年生以上の理科では、地域の水環境や生物に興味関心を持たせ、科学的に調べる態度、知識理解、技能を育成しています。社会科では、地域の河川やため池を題材に、農業をはじめとする産業のための利水と、地域での防災のための治水という両面から考える力を養います。算数では、例えば水の体積の単位や計算を扱う際に、狭山池の開水面積と平均水深などから貯水量を計算し、実際の貯水量との比較検討を行うようなことをしています。国語では、理科や社会での調べ学習をした結果について、文章としてのまとめ方、表現や発表の方法など、プレゼンテーションを意図した言語能力の育成に重点をおいています。さらに総合的な学習の時間では、各教科で学習した水や川に関する事項と、水に関する体験学習を統合し、地域の水や川についての問題・課題の発見と解決方法を考える力を身につけることを目指しています。
 

「科学するこころ」を育てる


 河川教育だけによるものではないかも知れませんが、生き物に触れる子どもの数が、一般の学校に比べて多いと思います。例えばゴキブリを触れるというのはちょっと問題かもしれませんが(笑)、バッタのようなものには普通に触れますし、カエルを手の上に乗せても大丈夫です。自然体験が増えたので、生き物との距離が短くなったと感じます。これは子どもたちの感性の豊かさにつながっています。
 また各教科においては、水や川を一つのテーマとして絞り込んで取り扱うことにより、子どもたちの学習の方向性がはっきりするとともに、科学的・論理的にものごとを考える「科学するこころ」や総合的な見方が育ってきたと実感しています。
 例えば、今はあまり無いのかもしれませんがコンクリート三面張りで河川改修をすると、そこの生態系が変わってしまったり生き物がいなくなったりする。それによって河川の環境が悪くなるかも知れないと子どもたちは考えます。一方、河川改修をすることは洪水の防止に役立っています。万が一、大雨が降って洪水が起これば、自分の家も被害を受ける可能性もあります。そうすると、環境保全はもちろん重要ですけれども、治水も大事ということになりますね。
 このような対抗リスクの問題について、データをもとにして考えてみるということです。物事の見方は子どもによって、もちろん違います。例えば山手の方に住んでいる子どもは、治水というのは程々でいいのではないかと考える場合もありますが、それはデータをもとに自分でそう判断したということでいいと考えています。科学的・論理的にものごとを考える「科学するこころ」や総合的な見方をもとに、自分自身の意見・考えを持つ子が増えたというのは事実だと思います。
 

継続の課題をペア制度で解消


 やはり人材の面が一番の課題です。河川教育を、私や特定の先生だけでやっていると人事異動などの際に継続性が無くなってしまいますので、できるだけ先生をだぶらせて二人で教えるようにしています。本校は理科、社会といった教科での専科制(注:教師がいくつかの学級においてその教科を教授する方式)をとっていますが、例えば理科の授業で水や河川を取り上げる場合には、できるだけ理科担当の先生と学級担任の先生が一緒に入って教えるということをしています。
 もちろん先生にとっては、空き時間が少なくなって時間的な負担が増してしまいますので、すべての学年や授業で二人の先生を入れるのは無理ですが、できるだけそうなるようにしています。そうすると、初回は専科の先生が説明してもう一人の担任の先生は見ているだけであることが多いのですが、2回目、3回目になってくると、むしろ担任の先生が子どもに説明していくようになります。このような取組みによって、先生同士で情報交換を行ったり、教育のスキルをお互いに教え合うようになりました。やっぱり一緒にやるというのがいろんな意味でいいのでしょうね。
 

開かれたネットワークが更なる発展へ


 まず学校では水や川についての専門知識を得るというのが難しいです。教員が間違ったことを正しいと思い込んでいる場合があり、それを教えることはよくないので、そのようなことが起こらないように支援していただけると良いです。例えば大学の先生、国土交通省の河川事務所の職員、学校の教育活動に合致するNPОの方といった専門家に相談できたり、アドバイスを受けられると良いと思います。
 それから河川教育に取組むきっかけを作るための情報提供も重要です。河川に関係して、社会、理科、算数、道徳といった様々な教科で、教材として使える素材集や事例集のようなものがあると良いです。それぞれの教科で、河川についてこんな形で教えたり活動できたりするということがイメージしやすく、先生も安心して最初の一歩が踏み出しやすいでしょう。
 また、学校間のネットワーク化ができると良いです。私もいろいろな小学校を回ったりしたことがあったのですが、わりと小学校は完結型で、その学校内だけで、完結するような活動が多い感じがします。中学や高校では教科の研究会が盛んなので学校を越えて交流できるのですが、小学校の場合には学校間のネットワークがほとんど無いと思います。そのようなネットワークが構築できたらだいぶ違うのではないかと感じます。河川財団で実施している「川づくり団体全国事例発表会」や「河川教育研究交流会」も、NPО等の川づくり団体や河川教育に取組む他の学校の先生との交流やネットワークづくりに役立ちます。
 

最初のハードルは少し下げて、徐々に質・量を充実


 最初は無理をしないということです。自分の学校で現在やっていることを一度見直して、そこに付け加えるところがあれば付け加えるというように、最初のハードルは少し下げた方が良いです。
 また学校の近隣に河川があって学習環境に恵まれている場合は良いのですが、そうでない学校でも、地域で探してみれば何かあると思います。例えば川がなくてもため池があるとか、あるいは海が近いとか、河川のみならず水の学習という形で捉えてもう一度、地域を見渡すだけでも何か発見があるはずです。わざわざ遠くにまで出て行かないとできないというものでは無いし、学校行事の体験学習や修学旅行のような機会を活用することもできるでしょう。そのような無理のない形で進めるのが大事ではないでしょうか。
 自分の学校での、既存の教科の中での取組や地域の資源を見つめなおすことから始めて、できるところから開始し、徐々に質や量を高めていくというスタンスが良いでしょう。




 
大阪初芝学園はつしば学園小学校

2003 年に大阪府堺市に誕生した新しい学校で、日本最古のダムである狭山湖ダムをはじめ都会でありながら水と緑に恵まれた環境に位置する。
設立当初から水環境学習や地域学習の場として大和川、西除川や狭山池ダムを活用していた。
現在は、理科をはじめとする教科、総合的な学習の時間、学校行事、放課後サイエンスクラブなどを有機的に連携させ、実践を通して「はつしばスタイル」の河川教育プログラムの実践に挑戦している。

橘 淳治 Junji TACHIBANA

大阪初芝学園はつしば学園小学校 教諭
1957 年大阪府生まれ。1982 年大阪教育大学大学院修士課程理科教育修了。1982 年大阪市立中学校、1984 年大阪府立高等学校、2002 年大阪府教育センター、2011 年大阪府立高等学校を経て、2014 年から現職。滋賀県立大学、四條畷学園女子短期大学等で非常勤講師を歴任。専門分野 陸水学、環境安全教育
【主な著書】環境安全学(共著、丸善)、GIS の応用(共訳、技報堂出版)、生物Ⅰ・Ⅱの総演習(三省堂)【主な論文】小・中・高等学校の安全教育と教員研修(安全工学)、実験を通して考える生物と水質の関わりを扱った環境教育(環境教育学会誌)など。