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掲載日:2020.06.22

【レポート】久留米市における「プロジェクトWET」実践活動のレポート(2019年後期)全7例

【レポート】久留米市における「プロジェクトWET」実践活動のレポート(2019年後期)全7例

2020/06/22

レポーター: ファシリテーター鍋田康成(筑後川まるごと博物館運営委員会) 2020.06.19
レポート期間: 2019年8月~2020年2月(7件の事例)
場所: 福岡県久留米市(筑後川防災施設くるめウス、久留米大学御井キャンパス)

九州一の大河・筑後川の中流域に位置する久留米市で活動する筑後川まるごと博物館運営委員会は、2017年以来1年に2回のペースでプロジェクトWETエデュケーター講習会を行なっています。昨年の2019年12月22日に通算6回目となる講習会を終わり、今まで合計101人のエデュケーターが誕生しました。この中から今まで8人の方が上級指導者であるファシリテーターとなっています。
当初の受講者の中から「実践の場が欲しい」との声が上がり、2017年10月から有志が集まり「プロジェクトWET自主研究会」が始まり、筑後川防災施設くるめウス(以下、くるめウスという)において年6回程の活動を行っています。この活動は、今までエデュケーター講習会に参加された方々を対象に、これからのプロジェクトWETの活用について自主的に研究する場となっています。この会は自由参加の形で集まった皆さんと意見交換しながら、子どもたち向けの WETプログラムを実施するために、アクティビティの工夫と 研究を重ねてきています。併せて、子供向けWET体験会「水のふしぎ」を実施して、指導者としての腕を磨く実践の場としています。以下に、2019年後半(2019年8月~2020年2月)の「プロジェクトWET」実践活動をレポートします。
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■子どもたち向けのプロジェクトWET体験「水のふしぎ」
久留米市で実施した過去6回のプロジェクトWETエデュケーター講習会で誕生したエデュケーターのWETプログラムの研究と実践を兼ねて、くるめウスに来館した子供たちを対象にWET体験会「水のふしぎ」を行いました。身近な水について体験活動を通して理解を深めることを目的に、2019年度は6回行ない学生も含めて延べ132人が参加しました。活動終了後、必ず振り返りの会で改善点を話し合うことを重ねています。このことで次第にアクティビティが進化して身についてくることが実感されました。各回のプロジェクトWET体験「水のふしぎ」のレポートを以下にまとめます。

 (1)8月3日「子ども水の学芸員養成講座1回目」子どもプロジェクトWET体験  [実施報告1]
今年度初の試みとして、夏休みの子どもたち向けに、水に関する夏休みの自由研究作成をサポートする連続講座を行いました。3回の活動に参加して自分で気づき調べた結果を、最終日に自分の作品にまとめて発表すれば「子ども水の学芸員」に認定するというものです。各回で「水の大切さ」「水の特性」「自然環境を守る必要性」などをわかりやすく学び、この活動の中で、探究心、まとめる力、発表力を育てることを目標に行いました。第1回のテーマは「水の大切さ、川の流れと汚染」として3つのアクティビティ(青い惑星、ブルービーズ、塵も積もれば)を、14回目となるWET自主研究会を兼ねて行ないました。
ファシリテーター4人(服部さん,國武さん,彩夏さん,鍋田)が講師となり、事前公募で集まった親子11人とともに、クイズを交えて体を動かす体験活動を2時間楽しく行ないました。

体験1.青い惑星(地球上での陸と水の割合を知る)

立体地図で流域の川の流れ方を学ぶ

体験2.ブルービーズ(季節の川の水の流れを体感)

体験3.塵も積もれば(川の汚れはだれの責任?)

(2)8月18日「子ども水の学芸員養成講座2回目」子どもプロジェクトWET体験  [実施報告2]
第2回のテーマは「自然環境・生態系の変化と再生」として、15回目となるWET自主研究会を兼ねて3つのアクティビティ(水リンピック、侵入者、ハンプティダンプティ)を行ないました。ファシリテーター4人(工藤さん,國武さん,彩夏さん,鍋田)の指導で、親子12人が2時間の体験活動を楽しく行ないました。次週最終回の自由研究作品作りと発表会へ向けて、子どもたちの作品作りの参考にとして、水や川に関する絵本や子ども向けの解説本をあらかじめ購入して紹介しました。子どもたちは、今までやった体験活動の中で自分が興味を持ったことを自由に選び、自分のテーマを決めて次週までに家庭内で予習し作品づくりと発表に臨む準備をしてきてもらいます。この回は、そのための質問が多くありました。

体験1.水リンピック(水のふしぎ?クリップはなぜ浮く?)

(水が盛り上がるのはなぜ?表面張力を実感!)

体験2.侵入者!(在来生物を絶滅させるのはだれ?)

体験3. ハンプティダンプティ(なかなか元には戻らない)

(3)8月25日「子ども水の学芸員養成講座3回目」子どもプロジェクトWET体験  [実施報告3]
この日は16回目となるWET自主研究会を兼ねて、4人のファシリテーター(服部さん,堤さん,國武さん鍋田)の指導のもと、親子12人が当講座最終回の3時間の活動を行ないました。3回目のテーマは「水の特性と水循環」として、2つのアクティビティ(動いている分子、驚異の旅)を行なったあと、前2回の活動を振り返って、水に関して各自が調べたことや、みんなに伝えたいことについて、まとめの作品作りを行ないました。できた作品は、川をきれいに!という啓発ポスターが1点、流域の水害や世界の水道、水の大切さについて調べた壁新聞が3点、また、川の汚染防止に私ができる事について書いた作文と絵がセットで1点の計5点で、それぞれ子どもたちが自分の思いを元気に発表しました。参加者の感想としては「水がどれほど尊いかよくわかった。今度は家の水がどこから来ているか調べてみたい」「水が形を変えていろんなところにあり、旅していることを改めて知った」「子どもが水について好奇心を持って取り組み楽しんで活動していた」「水について知らないことがたくさんあった」「親子で体験できて良かった」「楽しく学べて友達ができた」「体験活動が工夫されていて楽しくわかりやすかった」などがあり、親子で活動していただきました。

体験1.動いている分子(水の三態を自分の体で表現)

体験2.驚異の旅(自分が体験した水の旅を発表)

最終回、自分の水に関する自由研究作品を作成

作品への思いをみんなの前で発表

5人の作品を前に張り出して一人づつ発表

発表した人に「水の学芸員」認定書を授与

(4)10月26日 子ども版プロジェクトWET「体験ゲームでわかる、水のふしぎ」[実施報告4]
久留米周辺の5人のファシリテーター(服部さん,工藤さん,國武さん,彩夏さん,鍋田)が集まって、17回目となるプロジェクトWET自主研究会を開催しました。同時に事前募集して集った親子13人と学生9人が参加して、プロジェクトWET体験会 “水のふしぎ”を実施しました。子ども向けに改良した「青い惑星」「ハンプティダンプティ」「侵入者」「塵も積もれば」の4つのプログラムを行ない楽しく学びました。参加者からは「ゲームをやりながら実際に体験することで考えるきっかけづくりができた。」「外来生物の恐ろしさがよくわかった。」「水の大切さが体験でよく伝わった。」などの感想がありました。

体験1.青い惑星(地球上で水は大切な存在を知る)

体験2.ハンプティダンプティ(自然の復元はむつかしい)

体験3.侵入者!(在来生物を絶滅させるのはだれ?)

体験4. 塵も積もれば(川の汚れはだれの責任?)

(5)11月16日 子ども版プロジェクトWET「体験ゲームでわかる、水のふしぎ」[実施報告5]
ファシリテーターら5人(工藤さん,堤さん,國武さん,倉吉さん,鍋田)がくるめウスに集い18回目となる自主研究会を行い、子ども向けプログラム実施へ向けて改善策を話し合いました。実施の際は、子どもたちに「水の大切さ」や「水の性質」等を知ってもらう、という目的に沿って活動することを皆で確認しています。その後事前募集して集った親子5人と久留米大学生14人に対してプロジェクトWETの体験活動を行ないました。今回は「青い惑星」「水リンピック」「驚異の旅」「ブルービーズ」の4つのプログラムを実施しました。「驚異の旅」は、参加者が水の分子となって、サイコロを振って水の循環を自ら体験する人気のアクティビティです。学生や子ども達は楽しく学んでいました。参加者からは「子ども達と楽しく活動できた」「水の循環がよく分かった」「四季の川の流れの違いがよくわかった」などの感想をいただきました。

体験1.青い惑星(地球上に水はどれくらいある?)

体験2.水リンピック(水のふしぎ?アメンボになりきり)

体験3.ブルービーズ(季節の川の流れ方を実感)

体験4.驚異の旅(自分が体験した水の旅を発表)

(6) 2020年2月22日 子ども版プロジェクトWET「体験ゲームでわかる、水のふしぎ」[実施報告6]
くるめウスにおいて19回目となる自主研究会を行うと同時に、親子15人が参加して、身近な水や環境を守る大切さなどについて、ファシリテーター3人(國武さん,彩夏さん,鍋田)の指導でプロジェクトWETの体験を行ないました。この日は4つのアクティビティ「青い惑星、水リンピック、動いている分子、驚異の旅」を実施して、「青い惑星」では水の大切さについて、「水リンピック」では水の性質とアメンボの生態、「動いている分子」では水の三態について、「驚異の旅」では水の循環について楽しく学びました。 参加者の感想として「水が汚れるとアメンボなどの生き物が生きていけないことがわかった」「水がいろんな形に姿を変えて旅をしていることを実感できた」などがありました。

体験1.青い惑星(地球上で水が大切なことを学ぶ)

体験2.水リンピック(水のふしぎ?表面張力を実感)

体験3.動いている分子(水の三態を自分の体で表現)

体験4.驚異の旅(自分が体験した水の旅を発表)

■筑後川流域講座
筑後川流域講座は、久留米大学の公開講座で2020年に開講以来20年目を迎えます。筑後川の現状や課題などを学ぶ講座として定着してきており、2019年の当講座には一般市民及び学生を含めて延べ1,656人が受講しました。流域の自然,歴史,文化,エネルギー,防災などについて流域で実際に活動研究する講師の話を聞き、新しい知識を得て自らの学びを深めています。この講座の中で、前期と後期に各1回、体験実習としてプロジェクトWETを使った協同学習を行ないました。参加者は将来の指導者へ向けての知識と経験を積んでいます。前期は「水防災」、後期は「水環境」がテーマです。以下に後期の水環境協同学習の結果をまとめます。

(1)10月28日後期第6講「水環境協同学習」[実施報告7]
前期の「水防災」に続いて、後期はプロジェクトWETを活用して「水環境協同学習」を行ないました。
WETのアクティビティ「塵も積もれば」を応用して90分のグル一プ学習としました。学生と一般人計32人の受講者を5つのテーブルに分け「筑後川から有明海へ!川と海の水環境・汚染を考える」をテーマとして実施しました。私たちの身近なゴミ問題は、大切な水の供給源である川の汚染から、世界的な海洋のプラスチック汚染にまでつながっており、それは人の健康や全地球的な問題となる環境変化、気候変動にも大いにかかわってきています。この水環境協同学習ではグループに分かれて、みんなでこのことを考えて「私たちが身近かで今できること、考えるべきこと」などを話し合い、みんなで共有しました。この授業では、ファシリテーターが事前に参加者に対して、環境問題のWebサイトを指定して予習してくるように要請しました。当日の学習では、地域のゴミや環境汚染に関する動画やスライドを映写して、各テーブルには関連の新聞記事や久留米市環境部作成のリーフレットや福岡県作成のプラスチック海洋汚染に関する資料を情報提供しました。各グループ毎に、まず川沿いに自分たちが思う街の絵を自由に描いて「その町ではどんな環境汚染が考えられるか?」「それに対して対策できること、できないことは何か?」「自分たちが今できることは何か?」の3点ついて各自の意見を出しあいました。それをグループの意見にまとめて共有し、最後にみんなの前で発表しました。参加者の意見としては「自分のゴミの量を減らす」「マイバッグ、マイボトルを持つ」「レジ袋の有料化、リサイクルの推進」などが挙げられました。また感想としては「マイクロプラスティック問題をもっと知りたいと思った」「水環境の汚染問題に理解と意識が甘かった」「何気ないポイ捨てが環境に大きな影響を与えかねないことが分かった」「グループ内で同じテーマに沿って話し合うのが新鮮だった」などがありました。このようにみんなで考える協同学習は、参加者に環境問題への意識をより強く持たせたようです。

1.始めに講師から動画、スライドなど情報提供

2.グループ毎に自分たちが住みたい町を描く

3.グループ討議、自分たちの町での環境汚染とは

4.グループ毎に発表、自分たちでできる事とは

発表内容:川の流域に描いた自分達の町、そこから発生する環境汚染は何か?
地図に付箋紙で示す。

さらに環境汚染への対策はどうしたらいいか?今自分では何ができるのか?
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