【河川基金からのお知らせ】

認め合う環境で子ども達の自信が生まれる

2021/01/21 事例紹介

ろりぽっぷ学園ろりぽっぷ幼稚園・保育園(宮城県)
学園長 加茂 光孝 さん 保育園園長 高橋 恵美 さん 小規模保育園園長 髙橋 元気 さん


川での歩き方を学びます

 

河川基金申請のきっかけ

 河川基金の助成を受ける前から、海や川など自然に触れる機会を幼児たちに与えてあげたいという思いはありました。ろりぽっぷ学園では、自由に遊びながら多くの体験を重ね、子どもたちの発見・気付きに寄り添う保育を心掛けており、ここ仙台は山川海と素晴らしい自然があふれる土地。子どもたちに豊かな自然に触れる機会を作ることによって、自分の故郷を大好きになって欲しいという思いから、私たちは何ができるのかを探る中で「杜々かんきょうレスキュー隊」という仕組みを知りました。「杜々かんきょうレスキュー隊」は杜の都仙台の特色ある自然環境・社会環境を素材に、環境NPOの方々等が環境学習プログラムを作成・提供する事業。市内の小中学校・保育園などの教育現場へ専門の講師を無料で派遣していただける事業を活用し、主に川で環境学習プログラムを行っている「カワラバン」の菅原さんに出会いました。河川基金は菅原さんからご紹介いただき、6年前から活用させていただいています。
 川遊び場所は私が知っている秋保の名取川上流で始めました。
 誰も何も知識がない中、小さな子どもたちを川で遊ばせることは危険だということで、教員の研修や安全な活動を行うための準備・計画を菅原さんと行ったのが最初の川遊びのはじまりでした。
 フィールドに名取川を選んだきっかけは東日本大震災の影響がありました。
 震災直後は、ヘリコプターからの避難指示もあり、高台にある隣の小学校へ避難しました。津波は直ぐ近くまできましたが、幸い高速道路で止まり幼稚園は被害を免れましたが、避難した経験からでしょうか、当時海は怖いものとして印象が残っておりましたので、考慮した結果「川」をフィールドに選びました。幼稚園近くには名取川・広瀬川があり、移動には30分から40分のバス移動が必要ですが、名取川の上流はキャンプ場として整備され一番遊ばせやすい環境が身近にあったことも幸いしました。
 はじめの頃は、漠然と自然に触れさせたい!自然の中で遊ばせてあげたい!という思いで子どもたちを川へ連れて行きましたが、実際行ってみると生物がいたり石が滑り易かったり、行く度に水の量が多かったり少なかったりと川の姿が日々違うことなど、実に多くの発見がありました。

 

川での活動

 回を重ねる毎にカワラバンの菅原さんには様々なことを教えていただいています。まずはタイムスケジュール作成において、子どもたちのトイレや着替えをどうすればよいかなど、細かなアドバイスをいただきながら事前に安全な活動ができるよう、計画段階から相談にのってもらっています。川の体験活動の一日のスケジュールも菅原さんと詳細を決めていきました。最初は川での歩き方、川流れ等いろんな活動を行い、フィナーレが「川飛び込み」。これは年長さんだけの体験活動として設定しているのですが、面白いことに子どもたちの間では「年長さんになったら川飛び込みが出来る!」という特別感が出来上がっています。
 今でこそ、子どもたちは年長さんになると「川に飛び込むんだ!」と思っているので「川飛び込み」もスムーズに運びますが、最初、飛び込みを体験させた時は2時間も掛かりました。菅原さんには「川遊び中、ジャンプする子どもたちを待機する先生はウェットスーツを着た方がいいですよ」「足は底が厚くない普通の靴が良いですよ」など事前に分からない事をアドバイスいただけたことは大変助かりました。

 

活動で気を付けていること

 体験活動には保護者の方にもボランティアで何人かお手伝いをお願いしているのですが、ある程度慣れてきた頃、川には当然危険なところもあるのですが、お母さん方も先生方も緊張感が失われ、保護者の方もお喋りに没頭していたことがありました。その時これではいけないと思いそれ以降、お手伝いボランティアに来ていただく方には、お手伝いの意図をしっかりとお伝えし、それに同意していただける方だけにお手伝いをお願いしています。幸い事故は一度もありませんが、安全な活動が続くと、どうしても職員も保護者も危機意識が低下してしまうものです。それを防止するために毎年職員は研修に行き、高い意識を保てるよう工夫をしています。

 

活動による変化

 ろりぽっぷ幼稚園・保育園では様々な体験活動を大切にしています。子どもたちを安全な所ばかり連れて行くのではなく、時には危険もあるところへ行くことで、危険の学びがあると考えています。一見遊んでいるだけのように見える活動にも実は沢山の「学び」があります。
 自然から学ぶ、川から学んだ子どもたちの体験活動では、どのような学びがあったのか幼稚園から保護者の皆様へ学びの姿を写真付きで発信することで、多くのバックアップをいただけており感謝しています。
 子どもたちの変化は親御さん方にも広がっています。山へ行くことはあっても普段なかなか「川」を選択することはないのかもしれませんが、この園にお子さんを通わせるご家庭では「川」が選択肢に入っており家族で自然に親しむ習慣が根付いていることが伺えます。
 また体験活動から学んだ危機管理の意識も保護者の間で上がっていると感じる変化です。
 また、河川基金で購入したライフジャケットを、園では貸し出しを行っています。子ども達の体験を通して夏休みに家族で川へ行くご家庭も増えてきたと感じます。体験活動でライフジャケットの付け方を学んでいるため、何人もの大人にチェックしてもらいOKが出ないと川に入ってはいけないことをここの子どもたちは知っています。

 

体験を通しての成長

 子どもたちが自分で選んで行動すること、これは大きな成長です。
 川で飛ぶ、飛ばないを含めて自分で考え自分で決めて行動するというところの巣立ちを共有できるこの体験は素晴らしいと毎年感じます。子どもによっては飛ばない選択肢もあります。「皆飛べたから良かったね」ではなく、飛べた子どもはそれなりの達成感を味わえ、飛ばなかった子どもは、来年大きくなったらチャレンジしよう!と思い、様々な選択をした子ども同士、その選択を認め合える環境に子どもたちの友達関係を非常に良いものにしてくれています。この認め合う環境が他の場面においても自分の意見を言い易くなるような雰囲気が生まれているようです。学童保育には100名近くの小学生が在席していますが、5歳児のリベンジとして川での活動を楽しみにしてくれています。幼稚園から小学校への橋渡しとしても、主体的な子ども、自分の事を考え決められる自己決定能力を身につけていきます。

 

体験からの学び

 子どもたちの学びは川への体験活動だけでは終わりません。
 例年漁業の方から鮭の卵を分けてもらい、子ども達が大きくなるまで育て時期が来たら川へ放流に行きます。今年は鮭の卵が手に入らなかったので、マスをお世話していますが、なぜ鮭が戻ってこなかったのか?子ども達とその理由について話し合い考えていく中で、話は地球温暖化まで及びました。どうしたら地球温暖化を止められるのだろう?自分達の出来ることはなんだろう?子どもたちは考え、普段の生活の中でも電気を無駄にしないよう見回りを始める子が出てきました。自分の出来ることは何か?考える子どもの姿がそこにはありました。
 普段川へ行かない人にとっては、川を見ても「綺麗だね」等感じるだけでしょうが、体験活動を行うことで、子どもたちは「川」は体験するところと捉えていることが分かります。
 ある時、川の体験が天候の理由で中止となり、代わりの活動は何をしたいか尋ねると、晴れた日にゴミ拾いをしたい!遊んだ川を綺麗にしてありがとう!と言いたい等の意見が自然に出てきます。私たち大人でさえ、川へ行くまでは自然に向ける気持ちが普段あまりなかったことに気付かされました。体験を重ね、郷土の自然に対する気持ちが子どもたちに確実に育まれていると感じます。

 
 
学校法人ろりぽっぷ学園ろりぽっぷ幼稚園・保育園の取り組み

幼稚園・保育園の年長児を中心に、川の活動を通して自然の雄大さ、生命の神秘さを感じられるように、秋保神ヶ根地区の名取川を中心に活動しています。川を流れる体験から自然の法則を体感し、大岩からの飛び込みでは、怖い・難しいという気持ちに向き合うことで、困難に立ち向かう心を育んできました。サケの稚魚を育てて放流する活動では、「自分たちがサケの親になる」という責任感を持って取り組むことで、命の大切さに気付くことができるようにしています。
(写真:川を全身で感じます)

(写真左)
高橋 恵美 Emi TAKAHASHI

ろりぽっぷ保育園園長

(写真右)髙橋 元気 Genki TAKANASHI

ろりぽっぷ小規模保育園園長

(写真中央)加茂 光孝 Mitsutaka KAMO

ろりぽっぷ学園長

【出身】
羽陽学園短期大学

【紹介文】
・ 学校法人ろりぽっぷ学園 幼稚園1 園・認可保育園3園・小規模保育園2園・学童保育1園・子育て支援室2園
・仙台市男女共同参画推進審議会 審議員 平成23年~現在
・仙台市子ども読書推進員(2016~2017)
・仙台市若林区警察少年補導員(2019~)
・仙台市社会教育委員(2019年~)
・仙台市子ども読書活動推進計画(第3次)検討委員 平成28年度
・学校法人曽根学園 仙台幼児専門学校 非常勤講師
・親子向けパフォーマンスグループ 「そらとぶクレヨン」代表
※ファミリーコンサート 200公演以上
・子育伊達塾乳幼児楽会 楽会長
・ ラジオ3 ラジオパーソナリティー 平成22年8月~現在
番組名「そらとぶクレヨンのパパとしゃべるか~」
◎著書:仙台父子手帳(2008年発行)
◎子どもと健康―保育者をめざすあなたへ(共著:2014年4月1日発行)
◎こどももおとなもうれしい園舎 (共著:2018年5月5日発行)

講師歴 多数(仙台市・栗原市・名取市・酒田市等各保育園の保育士・幼稚園教諭向け:児童館職員向け:自衛隊向け:保護者向け)

【ろりぽっぷ学園 受賞歴】
☆ソニー教育財団 教育助成☆
【H27 年度】優秀園受賞 保育園
【H28 年度】奨励園受賞 ろりぽっぷ保育園 ろりぽっぷ幼稚園
【H29 年度】奨励園受賞 ろりぽっぷ保育園 ろりぽっぷ幼稚園
【H30 年度】優秀園受賞 ろりぽっぷ保育園 奨励園 ろりぽっぷ幼稚園
【令和元年度】☆奨励園受賞 ろりぽっぷ保育園
☆園庭環境☆
【平成28 年度】 第27 回緑化大賞受賞 いぐねのにわ―ほかならぬ場所―
第11 回キッズデザイン賞受賞
子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン
―いぐねがつつむ はじまりの「空感」―