【河川基金からのお知らせ】

屋根のない博物館 ~筑後川流域の活動~

2021/01/20 事例紹介

NPO法人筑後川流域連携倶楽部 駄田井 正 さん 筑後川まるごと博物館運営委員会 鍋田 康成 さん


左「ちくごキッズ探検隊」(夏の自然体験教室 こーら川子ども探検隊)
右「ちくご川子ども学芸員養成講座(7月〜12月の6回連続講座)」

 

「NPO法人筑後川流域連携倶楽部」の取り組み
 1999年 NPO法人として設立。筑後川流域での環境と地域づくりに関わる団体や個人のネットワークとして、流域の課題解決に向けて活動。筑後川新聞の発行、筑後川まるごとリバーパーク構想、筑後川防災施設くるめウスの運営、筑後川フェスティバルの推進、日本三大河川交流などを実施している。
 2006年 筑後川新聞が「全国地域づくり誌コンテスト」で優秀賞
 2016年 「第18回日本水大賞グランプリ」受賞

「筑後川まるごと博物館運営委員会」の取り組み
 2003年 連携倶楽部から独立して正式に発足。流域全体をひとつの博物館とみなして、ありのままの姿を人々に伝える活動を行う。筑後川流域講座、ちくご川キッズ探検隊、昭和 28年筑後川大水害を伝える会、現地学習ツアー、プロジェクトWET 講習会などをおこなっている。
 2006年「第8回日本水大賞 厚生労働大臣賞」受賞
 2010年「第3回ふくおか地域づくり活動賞グランプリ(県知事賞)」受賞
 2010年「ふくおか共助社会づくり表彰協働部門賞」(久留米大学と共同受賞)
 2017年、2018 年「日本自然保護大賞」に連続入選
 2018年「生物多様性アクション大賞 審査委員賞」受賞
 その他 河川基金優秀成果表彰(2013、2015、2017、2019、2020)


 筑後川は阿蘇山を水源に九州地方北部の熊本・大分・福岡・佐賀四県を流れる2860㎢の流域を持つ九州最大の一級河川です。この筑後川の素晴らしさを人々に伝える活動を行う二つの団体さんをご紹介したいと思います。NPO法人筑後川流域連携倶楽部では当初の主要事業として筑後川流域を「屋根のない博物館」にしようとの構想があり、そこから発展して後に生まれた「筑後川まるごと博物館運営委員会」。この川づくりの二団体さんは長きにわたり、うまく連携しながら活動しています。

 

設立のきっかけ

 今から33年前の1987年久留米大学産業経済研究所(現・経済社会研究所)において、筑後川・矢部川流域の総合研究が始まりました。連携を一層推進するためには恒常的な組織が必要とされ、1999年に「NPO法人筑後川流域連携倶楽部」が設立されました。流域全域の意見が反映されるようにと、役員の選出も上流・中流・下流から選出されています。
 「筑後川流域連携倶楽部」の設立に伴い、流域の50数グループをネットワークしたエコミユージアムの設立が構想され、2001年6月筑後川流域連携倶楽部内に「筑後川まるごと博物館」が発足しました。
 
 活動の一つとして同年9月、久留米大学で市民公開講座「筑後川流域講座」が開講し、独自の学芸員養成システムがスタートし、翌年の2002年3月には「筑後川流域講座」の一期生として学芸員22名が誕生しました。その一期生から、「受け身ではなく自分達でも何かできないか?」との声が自然と上がり、各自の得意技を活かしながら佐賀県で行われたイベントで筑後川を紹介する最初の展示イベント(筑後川まるごとリバーパーク展)を成功させました。この一期生が中心となり、2003年に筑後川流域連携倶楽部から独立した組織として現在の「筑後川まるごと博物館運営委員会」が設立されたそうです。それからは「筑後川流域講座」の運営は「筑後川まるごと博物館運営委員会」が担っており、昨年の19期まで延べ64名の学芸員を認定しています。

 

連携した活動

 かつて人々は水を求め川沿いに住み、いつしか川は物資輸送にかかせないものとして存在していました。その当時、同時に人々への交流もおこなわれてきましたが、高度成長期を経て川の役割も変わり、河川環境も悪化し川から人の姿は消えていきました。
 その川へ人々を戻そうという動きの始まりが、筑後川流域全体を川と水を主題としたテーマパークととらえて地域づくりを考える「筑後川まるごとリバーパーク構想」です。筑後川新聞の編集や筑後川まるごとリバーパークのモニターツアー等、二つの団体さんは連携を続けています。その活動の中心となる地域の防災拠点「筑後川防災施設くるめウス」では流域住民のための多くの体験活動・学習が開催されています。

 同時に二つの団体へ入会する会員さんも多く、筑後川連携倶楽部が発行する筑後川新聞(年6回発行)を通じて活動に参加する方が多いと伺いました。筑後川まるごと博物館の会員はこの新聞の記者であり、編集委員ともなっています。

 どちらの団体さんにも言えることですが、1年間に行われている事業の種類と数には驚かされます。行事一覧を見れば、川づくり活動だけではなく、人材育成や子ども達への情操教育など地域に根付いた重要な役割を担っています。

 「筑後川流域連携倶楽部」の目標は、筑後川・矢部川流域を一体的に捉えて、持続可能で質の高い生活の実現。環境・文化・経済の統合です。そのためには「学び」・「遊び」・「仕事」が分離されることなく融合した創造的流域の実現を目指しています。
 また、「筑後川まるごと博物館運営委員会」では地域住民や子ども達に、筑後川のありのままの姿を人々に伝え続ける数多くの活動を行っており、この二つの団体が両輪となり地域の人々への幅広い活動を支えています。

 

長く続ける秘訣と心がけていること

 自分達の出来ることを出来る範囲で楽しんでやること。決して無理はせず気長にやること。自分が出来ないことは得意な人に任せること。
 二つの団体が設立当初より心掛けていることです。これを実行するためには、誰が何を得意としているのか普段から知っておくことが必要になります。入会時には、何が得意で何をしたいのか?会員の意向をよく聞きとるようにしています。基本的には、自分がやりたいことをやる「この指止まれ方式」で行い一緒にやりたい人が協力してやっていく形をとります。そのために、自由に意見交換できる雰囲気を大切にしています。

 さらに、団体内でできないことは、他のできる人や団体に協力をお願いする等、外部との連携も大事にしています。活動に参加する人が、年齢や経験などに関係なく、やってよかったと少しでも成功体験を感じられるように、活動に工夫をすることも常に心掛けています。

 

将来に向けて

 今年、筑後川流域講座は20年目を迎え、今まで学芸員64名を認定してきました。その中から希望者は、筑後川まるごと博物館運営委員会の会員になり講座の講師や体験活動の指導者、そしてツアーの案内人として現在活動中です。この流れを継続して市民の参加をもっと促していきたいと思っています。さらに、この講座は久留米大学の正規の授業でもあるので、今後は学生の会員増加に向けて、若者にも魅力ある会の運営に力を注いでいきたいと思っています。
 また、子ども学芸員養成講座などの環境学習活動を継続して行う中から、自然や環境へ興味を持つ子ども達も出てきました。彼らが将来の活動を担うリーダーとなることを期待して、さらに人材育成にも力を注いでいきたいと考えています。
 プロジェクトWET講習会では、今日までに101名のエデュケーターが誕生しています。彼らの活動の場である「子ども達向けのWET体験活動・水のふしぎ」の実施と合わせて、年6回程行われているWET研究会を継続することで、エデュケーターの技能の維持と指導者としての経験を積み重ね、将来へつなげていきたいと思っています。

 
 
筑後川流域講座(久留米大学公開講座)

久留米大学経済学部と協同で公開講座「筑後川流域社会経済論」を年間30回開講。今年で20年目になります。学生にとっては正規の授業であり一般市民は無料の公開講座です。現在毎回80人程度の受講生があるこの講座は、流域各地で活動する人々を講師に迎え、流域のありのままの姿を伝え学ぶことを目的としています。受講者のうち希望者は、筑後川まるごと博物館運営委員会の会員となり、筑後川の案内人、解説者となります。
(写真:筑後川流域講座(久留米大学公開講座))

鍋田 康成 Yasunari NABETA

筑後川まるごと博物館運営委員会 事務局長

【出身】
福岡県久留米市

【紹介】
1950年生まれ。活動に関わるまでは1級建築士として全国の街づくりに関わる。2001年久留米大学で筑後川流域講座の受講をきっかけに、現在の筑後川での活動に取り組んで20 年。2003年から昭和28年筑後川大水害の体験者から聞いた話を後世へ伝える“聞き語り部” を自称しながら筑後川まるごと博物館の事務局長として活動。2018年からはプロジェクトWET ファシリテーターとしても活動している。

駄田井 正 Tadashi DATAI

特定非営利活動法人筑後川流域連携 理事

【出身】
大阪府堺市

【紹介】 
1944年生まれ、1970年に久留米大学に赴任、2014年に退職、久留米大学名誉教授。専門は文化経済学。1999年に筑後川流域連携倶楽部を立ち上げ、筑後川・矢部川流域を一体的にとらえて、持続可能で質の高い生活の実現を目指している。著書に、『文化の時代の経済学入門』(2011)、『筑後川まるごと博物館』(2019)などがある。