【河川基金からのお知らせ】

自然体験が保育理念の基本。そこに子ども達の笑顔が!

2021/03/31 事例紹介

NPO法人つくばハーモニー ラ・フェリーチェ保育園
園長 髙橋 晃雄 さん 副園長 齋藤 隆 さん


涸沼キャンプ 川遊び

 

自然体験を保育理念にする保育園を作る

 私は東京都葛飾区の中川の畔で生まれ育ったこともあって、川は当たり前にあるものであり、毎日の遊び場でした。また祖父と父、叔父も釣りが趣味だったことから、釣りは生活の一部になっていました。このような小さな頃からの水辺の楽しい思い出が根本にあり、その後、八丈島で新聞記者として社会人のスタートを切った際に雄大な自然に触れることで改めて、自然体験活動のすばらしさを実感しました。
 当保育園の運営のきっかけとなったのは、その新聞記者時代に、地方政治に興味を持ち、中学時代に引っ越した茨城県藤代町の町議会議員となったことでした。町議会では教育・福祉関係の常任委員の委員長として、〝小貝川の自然環境を活用してみんなで楽しく遊ぼう〟をコンセプトとした「小貝川3次元プロジェクト」を担当。プロジェクトを推進するNPOの運営や、水辺の安全講座や防災も絡めたプログラムに取り組みました。現在当園副園長をして頂いている齋藤さんと出会ったのは、このプロジェクトを通してです。議会では
保育園も担当したことから、議員引退後に保育事業に参入する企業にスカウトされ、保育園の運営に参加することになりました。2011年の大震災後、企業から現在の保育園の経営を引き取ることになったのですが、この保育園は近くに里山と遊水地を活かした公園があり、小貝川もそれほど遠くないことから、自然体験を保育理念の柱の一つとした保育園事業が可能だと考え、運営母体となるNPOを齋藤さんと設立しました。
 「四季の小貝川保育園」プロジェクトは、2016年の「川に学ぶ体験活動協議会(RAC)」の「全国一斉1万人・川の流れ体験活動キャンペーン」に参加して、園児と保護者に川流れを体験させたことがスタートです。
 小貝川をフィールドとして選んだのは、議員時代に関わっていた「小貝川3次元プロジェクト」の活動で周辺をよく知っており、どこにリスクがあるか、イメージではなく具体的なシミュレーションとして想定することができたからです。

 

水辺の体験活動のハードル

 水辺の体験活動を始めるにあたって難しかったのは、保護者の理解と同意でした。保護者に概要の説明を行ったところ、体験活動の危険性や水質などを懸念する意見がありました。親が水辺での体験活動の経験が少なく、イメージしにくいことが要因なのではないかと思います。RACトレーナーの同行など安全性の確保について説明しても不安を払拭しきれなかったので、「それなら一緒に参加してもらおう」と考えて、活動を始めてから2年間は親子参加としました。その後は、2年間の経験と成果から保護者の不安は払拭でき、3年目からは園児だけの体験活動に移行しました。当園の恒例行事として定着した水辺の体験活動は、今では、保護者の方に概要を伝えておけば、翌日の実施でも異論が一切出ないほどの信頼を得られるようになりました。
 また、水辺の体験活動の対象年齢は、初年度は保護者同伴を条件に3、4、5歳の受け入れを行っていましたが、子どもだけが水辺の体験活動に参加できるようシフトしたことや、発達段階のことを考えた結果、2年目以降は5歳児のみに限定しました。

 

河川教育を通した園児の「気付きと変容」

 「四季の小貝川保育園」の目標には、①自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く、②季節による四季変化に気付く、③生命の尊さに気付き、いたわり、大切にする、④感じたことや考えたことを自分なりに表現する、という4項目を設けています。
 子どもの変容という点で最も大切なのは「気付き」だと思っています。子どもは気付きが得られると、驚きや、発する言葉や表情に変化が表れます。しかし、子どもたちはその感動がなかなか長期記憶に結びつきません。そこで体験活動を行なった日に絵日記を書かせて、長期記憶に結び付けるように工夫してみました。そうすると絵日記を書きながら子どもたち同士で「気付き」を共有し始めたのです。一人の子どもが「水がキラキラしてきれいだったよね!」と興奮しながら言うと、他の子どもたちが「そうだよね!」と共感し、体験時の「気付き」を思い出していきました。
 もう一つ、体験活動を長期記憶化させるにあたって「五感に訴える活動」を意識しています。わかりやすい例として覚えているのが、小貝川の河川林で昆虫採集をした時のことです。昆虫図鑑を全部覚えていた子どもがいたのですが、その子は、実際に虫を見つけても虫の名前が言えませんでした。また、虫を触った子どもは、その虫を採ったことを覚えているのですが、見ていただけの子どもは、ほとんど記憶に残っていません。子どもは、生物を見て触って、初めて理解できるようです。
 また、子どもの目の前に林と川が見えたら、子どもたちはまず川へと向かいます。水辺でも水たまりでも、子どもは自分たちで遊びを考えて、飽きることなく遊び続けます。つまり、子どもたちにとって水辺は、常に興味の対象なのです。幼児教育における水辺の体験活動は特殊なものではなく、園庭での泥遊びの延長線上にある活動なのです。

 

安全管理と多彩なプログラムが継続につながる

 体験活動を続けるうえで必ずネックになるのは、保護者の同意形成と体験活動のフィールド探しです。保護者の同意形成は、体験活動を始めるにあたって、安全確保について説明を行うとともに、使用したライフジャケットをプレゼントして、私的に使用してもらったことも安全性のPRにつながったと感じています。
 フィールドについては、前述の安全性と衛生面で問題がない場所を使うようにしています。安全面については、台風の影響などで水位や流れの変化が激しい場所や、水底にルアーが落ちているなど安全確保が難しいところは避けるようにしています。衛生面については、どうしてもトイレが重要です。衛生的なトイレが水辺に増えることを願っています。
 また、意識していることとして、フィールドは、複数案を持つようにしています。昨年は、長雨と台風の影響で小貝川が増水して利用できない日が続きましたので、フィールドを増水時も流れが緩やかな涸沼に変更しました。涸沼は、私がよく釣りに行く場所でもあります。キャンプにしても同様に天気や場所の状況で何回も調整して、子どもにとって、最高の日に最適な場所でベストな状態の体験活動を実践できるようこころがけています。

 

体験活動の普及啓発に向けた研究と今後の展望

 幼児の体験活動では、五感を刺激する体験こそが生きる力を育んでいきます。特に河川空間を活用した体験活動は、効果が高いと考えています。しかし保育指針にもあるように、体験活動の必要性は理解していても、体験活動をやろうとする保育園や幼稚園は全国的にも少ないのが現状です。この現状を変えるためには、一つでも多くの園で体験活動を実践するためのマニュアルが必要だと思い、今年から河川財団の研究部門の助成金を頂いて活動を始めました。
 保育園や幼稚園では、カリキュラムに柔軟性はありますが、体験活動を保育計画に盛り込むことは、なかなか難しいものです。そこで初年度は「どこの保育園でも比較的簡単なプログラム」として、身近な水辺の生物であるザリガニを題材にしました。このプログラムは、低予算で幅広い年齢に対応したものとしました。来年度は、RACの指導者など外部講師と協力して行う川遊びやEボートを活用した、アクティブな体験活動を紹介したいと考えています。体験活動を行うためには、楽しいフィールド、安全な企画、指導者の確保、交通手段、必要な用具、予算の6条件が必要です。6条件さえそろえば川遊びやEボートなど敷居が高く感じられる体験活動が未経験の保育園や幼稚園でも実施可能なのです。あとは、予算と決定権ですから、園長先生など管理者の決断一つです。私は、保育園向けの体験活動マニュアルで、体験活動に取り組む保育園を広めたいと考えています。子ども達は川や水が大好きです。ぜひ全国の子ども達に水に絡む体験活動をさせてあげたい、そのために保育士と管理者が興味をもって、「できる」という気持ちで取り組んで頂きたいと強く願っています。

 
 
ラ・フェリーチェ保育園 高橋晃雄さんと齋藤隆さんの取組み

保育園・幼稚園の体験活動導入プログラムのモデルとして園庭に低予算で設置と管理が簡単なザリガニ池を作りました。ザリガニは、水辺の生物のなかでも特に生命力が強く、春から秋まで、保育指針にある「自然とのかかわり・生命尊重」に基づいたプログラムに活用できる教材です。
今年は、1歳児から5歳児までの様々な設定保育に活用しました。今後は、マニュアル化して普及を図りたいと考えています。
(左:ザリガニ釣り、右:ザリガニの模型づくり)

(写真右)
髙橋 晃雄 Akio TAKAHASHI

ラ・フェリーチェ保育園  園長

・(元)藤代町議会 教育福祉常任委員長
・(元)藤代町PTA 連合会 会長
・(元)つくば市子ども・子育て会議 委員
・NPO 法人 つくばハーモニー 理事長
・NPO 法人 川に学ぶ体験活動協議会 常任理事

(写真左)
齋藤 隆 Takashi SAITO

ラ・フェリーチェ保育園 副園長

・NPO 法人 川に学ぶ体験活動協議会 事務局長
・NPO 法人 つくばハーモニー 理事
・RAC(川に学ぶ体験活動協議会)トレーナー
・NELA(全国体験活動指導者認定委員会)主任講師
・保育士