【河川基金からのお知らせ】

ひたかみ水の里

2021/03/31 事例紹介

NPO法人ひたかみ水の里
代表理事 新井 偉夫さん  理事 新井 高広さん


カヌー体験

 

団体の設立について

 NPO法人ひたかみ水の里(宮城県)は歴史が20年という長いNPOです。会員は現在70名ほどで、北上運河をメインフィールドとして活動を続けています。毎週土曜日にはカヌー体験教室の開催(カヌーは約20艇)しており、水質調査やキャンプなども行っています。
 ひたかみ水の里は、2017年(公財)マリンスポーツ財団主催のライフジャケット普及プロジェクト(WEAR IT!)において、その年のイベントの中でライフジャケット装着者が日本で最も多く集まったことから表彰も受けたそうです。

 団体の名称にある「ひたかみ」は北上川の上流に日高見国(ひたかみのくに)というのがあり、そこから付けたそうです。「北上川」という名称も「日高見(ひたかみ)」に由来する説もあり、平安時代には北上流域を指すことになったとされています。
 「ひたかみ水の里」の設立に深く係っている代表の新井偉夫さんに設立当初の話を伺いました。
 元々東京生れの偉夫さんは、当時5歳の終戦間際に、母の出身地である石巻に疎開しました。水辺環境が多い石巻でしたが、川の環境は決して良いとは言える状態ではありませんでした。当時の川はゴミ捨て場と化し、社会的にも排水路として使用した時代。そんな汚れた川を見た偉夫さんは、川の環境をきれいにして魚も住める環境に変えなくてはいけない!と強く思ったそうです。川が綺麗になれば、魚や生物も戻りそして人々も水辺に集うようになる。そんな風に是非変えたいと思った新井さんは団体を設立しました。設立当初の活動は清掃活動がメインでしたが、団体の活動に加え、RAC(川に学ぶ体験協議会)、CONE(自然体験活動推進協議会) の設立にも深く係り活動をしてきたそうです。
 偉夫さんの息子・高広さんは、東京で料理の勉強をしていましたが、東日本大震災をきっかけに地元に戻りました。小さなころから父の活動を身近で見ており、よく参加もし経験を積んでいたので、地元がピンチを迎えた時、地元に戻る道を選びました。

 

水難事故が多いことについて

 ひたかみ水の里でもカヌーの体験活動などの水辺で体験をする際は、ライフジャケットを身に着けることが重要だということは説明しています。
 今年は、新型コロナウイルスの感染防止を考え、例年以上に川に出かける人が多く、水の事故が多発しています。川の利用者に向けて、川で遊ぶときにはライフジャケットを身に着ける、救助用のロープを準備するなど、予め安全を確保することが重要です。そして子ども達にライフジャケットの重要性を教えるなどの普及活動を支援する仕組みもまだまだ不十分です。川の専門家の資格を取得する人も増えてきましたが、川は地域ごとに違っていますので、各地域で普及できる仕組みができるとよいと考えます。学校教育でも体育の授業などで命を守るための基礎知識を是非教えてもらいたいと思います。そして河川財団もそのような取り組みに今後も支援を続けてもらいたいと思います。

 

コロナ渦の中で

 例年、小中学校での川の体験活動を支援していますが、新型コロナウィルス感染症の影響で今年度はまだ1校の支援に留まっています。
 一方で、7月の4連休に石巻にある石ノ森萬画館を運営している街づくりまんぼうが主催のイベントで、カヌー体験の依頼がありました。蓋を開けてみると、なんと!2日間で170名の申込があり多くのお客様にお越しいただきました。地域限定の折り込みチラシと地元のラジオでのアナウンスだけでしたが、お昼も食べられないような盛況ぶりでとても驚きました。
 コロナと共に過ごす新しい生活様式では、普段、制約だらけの日々に疲れた多くの人々が、自然の中で過ごす心地よさを求めているのかもしれません。

 

新型コロナ感染症対策

 有料の体験活動予約サイトにひたかみ水の里も掲載していただいていますが、そこの運営事業者がハワイの大学の疫学専門家の監修を受けて、体験活動用のガイドライン(チェックリスト)を作成しており、活用させていただいています。
 体験活動を支援する学校等にも、これに基づいて実施する旨を説明しており、保護者のみなさまやお子さんたちにも安心して参加してもらうためのガイドラインとして大いに活用させていただいています。
 参加者の皆様には、検温チェックやアルコール消毒も実施しており安全に活動が出来ています。野外では、非接触型の検温機器については、機種によっては日射の状況により的確に計測できないこともあるので、少し高価にはなりますが、確実性が高い検温機器を購入することをお勧めします。
 
ご参考
アソビュー 観光施設向け新型コロナウイルス対策チェックリストについて
アソビュー株式会社 監修:ハワイ大学 疫学専門家 岡田悠偉人
NEW NURSING 株式会社

 

継続性の確保と行政の支援について

 活動を継続して行うことは市民から信頼を得るうえでも大事なことです。
 継続した活動を支えるのは「人」であり、人数を確保するのも大変ですが、ひたかみ水の里では、人手が必要な時、高校時代の同級生など知り合いや町内会、また、地域の子供たちを対象とした自然体験クラブであるめだかっこクラブの中高生などが手伝いに来てくれます。また、企業との連携協力もあります。北上川でイベントをするときには救助艇を出していただいたり、カヌーで乗り降りできるよう浮桟橋も用意してくれたりするサポートは心強い限りです。
 
 資金面の確保については、県から運河の両岸800mについて除草を行う業務を随意契約で受託しています。その契約は15年くらい前から始まっています。昔と違って現在では、行政も地元の団体を積極的に支援する姿勢に変わってきていると感じます。地域のことを一番知りつくし、地域の自然を想う地元の人々を大切に育んでいる団体を支援することはとても大切なことだと思っています。
 各地域の河川にこのような団体が活動を続けられるような社会をつくっていくことが今の日本には必要であり、石巻では「ひたかみ水の里」が行政や地域住民との良好な関係を構築し、先取りしたかたちで実現していると自負しています。
 
 県の環境対策課では、川の環境を守る団体に対して、資金援助ではなく、生き物調査用の網やバケツ、水質調査用のパックテストの器具、本、図鑑等物資面での物資支援を行ってくれており大変助かっています。
 さらに、宮城県ではスマイルサポーターという制度があり、認定団体には法面用の草刈り機を燃料込み+無償で貸してくれます。たとえば河川美化でゴミ収集を行うと、自転車や冷蔵庫などの粗大ごみが出てきたりしますが、宮城県と石巻市とが連携し固定の場所へ置いておくと引き取ってくれます。
 
※スマイルサポーター宮城県では、ボランティアで道路・河川・海岸・公園等の県管理施設の清掃や緑化作業を行い、良好な環境づくりに積極的に取り組む個人、団体を「スマイルサポーター」として認定し、「里親」となっていただく制度を立ち上げています。

 

国との連携

 北上川下流河川事務所の方々とミズベリングで連携を行っています。
・印象的な思い出としては、今市が管理している準用河川の中里川はもともと農業用水路でしたが、23年くらい前に暗渠にするという計画が持ち上がりました。我々は、子ども達が生き物と触れ合える親水性のある川にしなければとの思いで運動を行い、800mを残すことになりましたが、市では整備の財源が確保できず困り果てて、国土交通省へ相談に行ったところ、宝くじ基金を紹介くださり整備の費用を確保することができました。
 最近では、東日本大震災での復旧事業として、新たに堤防をつくる計画が出てきました。(今年度完成予定)その際には、堤防のデザインについて意見を聞かれ、めだかっこクラブの子供たちの意見なども聴取されました。国土交通省方々からも川づくりについて、地元の意見を吸い上げるために、気さくに私たちと意見交換の機会もあり、良い関係を築けていると思います。

 
 
ひたかみ水の里今後の活動の重点

これまで通り、地域の子ども会や学校を中心に川に親しむ活動の支援や、川にも怖いところもあるが正しく恐れることが安全に活動する事であることを教えていきたいと思っています。親水空間の整備、ハードというよりソフト面での支援、特に、自分(高広さん)は料理の経験があるので、カフェスペースをつくり、河川の風景を見ながら人々が集える場ができたら良いと思っています。
(写真:水辺で乾杯)

(写真左)
新井 偉夫 Hideo ARAI

NPO 法人ひたかみ水の里 代表理事

出身:東京
CONE(自然体験活動推進協議会)初代理事
Rac(川に学ぶ体験活動協議会)初代代表
北上川流域連携交流会 下流代表を務め、NPO 法人ひたかみ水の里を設立。

(写真右)
新井 高広 Takahiro ARAI

NPO 法人ひたかみ水の里 理事

出身:宮城県石巻市
父(代表理事)に連れられ川のイベントや講習会に小さい頃から参加。
高校卒業後に上京し、飲食関係の学校と仕事をするが東日本大震災発生を機に石巻に戻りひたかみ水の里に従事する。

(写真:ミズベリング視察時)

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