【河川基金からのお知らせ】
ドローンを活用した教材開発に挑むWEB ページを活用した新しい教材作成
2021/03/31
古川第一小学校 校長 前田 正さん 教務主任 熊谷 俊祐さん 教諭 遠藤 拓海さん
5年生 流れる水のはたらきの授業風景
河川教育の導入について教材開発を行った遠藤先生へ伺いました
以前、中学校で勤務していた折、自然科学部の顧問を担当していた頃、川に関する助成はないものかと調べ、「河川基金」を見つけました。一昨年、初めて河川基金を申請したことがきっかけとなり、「河川教育」を導入しました。今回題材となっている一級河川の江合川は、緒絶川と同様に本校児童がよく知る川として身近なものですが、児童と話をしてみると、意外にも名前を知る程度でしかありませんでした。児童のほとんどは、実際に川へ行った経験もなく、その辺りにはメダカなどの絶滅危惧種が生息していることを知る子ども達もあまりいませんでした。身近な江合川にもっと興味を持ってもらいたい!との思いから川を身近に感じられるような教材を作れないかと考えはじめました。
以前より河川教育を取り入れた学習ができないものかと考えておりましたが、本校は総合的な学習の時間として特に川について調べる学習はありません。そこで、5・6年生の理科の授業における川を題材とした単元を使い、河川教育を関連させて実践できないものかと検討しました。
ドローンの活用について
本来なら理科の授業として実際に川へ行き、川原の石や流れの速さ、侵食の様子を生徒自身に観察させたいと考えましたが、時数の制限や付き添いの教員数の課題があり、実際に観察に連れて行くことは大変困難な状況でした。それを補うには、NHKの教育番組等で川の様子を見せることで観察の代わりとしている学校が多いのではないでしょうか。私たちの身近な川「江合川」は、上流~下流で非常に変化に富んだ川であり、教材としてとても適している川ですが、実際に川に入って動画や写真を収めることは危険も伴う為、ドローンを活用した撮影を考え、実際に教材開発へと動き始めました。
今回、河川基金で初めてドローンを購入し、撮影の前には操縦の練習も行いました。現場では、河川の状態を観察しやすくするためにドローンの高度を一定に保つなど、工夫を凝らして撮影に挑みました。実際にドローンを使っての撮影には5日程かかりましたが、実は非常に苦労したのは撮影の事前準備でした。ドローンを使用しての撮影については、飛行禁
止の場所が存在するので特に注意が必要です。今回の撮影ポイントは、人口集中地区(DID)と重なるところがあるため、地図と照らし合わせながら飛行禁止エリアを避けるように行いました。場所によっては他の電波と干渉するためか、川幅240mの川の真ん中でドローンが操作不能となるアクシデントもあり、現場ではかなり焦りました。幸いドローンが出発地点の位置を記憶しており、自動で戻り心底ホッとしました。
ドローン撮影から教材開発、そしてWEBページ作成まで全て行うのは大変な道のりでしたが、「できることがあれば何でも挑戦しなさい」という前田校長先生の励ましのお言葉と、周りの先生方の協力があってこそ実現したのだと思っています。
動画・WEBページ作成の工夫
今回の教材開発には様々な工夫が凝らされています。撮影・編集を担当された遠藤先生に詳しく伺いました。
初めはドローンの映像だけで動画作成を考えましたが、風景だけでは距離や高さが分かりにくいので、動画編集ソフトでテキスト解説を入れました。また、川幅がどれくらいなのか?どこから撮影し高さはどれくらいなのか?なども分かるようにしました。さらに、操縦画面も動画の右下に入れることでドローンと操縦者の距離をリアルタイムで表示させました。県内の人であれば誰でも撮影場所が把握できるよう地図も付けました。
教材を5、6年生の理科で扱い易くするために、「河原の石」であれば石を収録した映像を中心に、「流れる水の働き」であれば浸食をまとめた映像を編集するなど、単元を意識した編集にしました。映像を見て話し合うなど授業で使いやすくするため、一つ一つ短時間でまとめるよう心掛けました。
授業での効果について(熊谷先生)
河川基金助成事業の申請は当時理科の専任教員であった遠藤先生が行いましたが、実施段階となった年には学級担任になったため、授業での活用は理科専任教員となった熊谷先生が行いました。授業で活用した時の効果などを熊谷先生に伺いました。
児童にとってドローン自体が興味深い物であったこともそうですが、何よりもその機器で自分達の身近な川が撮影されたと聞くと、さらに子ども達の興味関心を高めることができました。実際に撮った映像では、自分たちが知っている川の風景ではなく山深い上流、広い河口の様子を観察することができました。普段なかなか行くことのできない場所の映像を見ることは、子ども達にとっても有意義な時間になったようです。ドローンの機能として飛距離が分かる表示があり、実際に何メートルの川幅なのかを理解するのに役立ちます。
昨年の授業では、地域の川の地図と写真を合わせながら、それぞれの地点の川の様子を理解する教材として使用しました。児童には、石の大きさと水の流れの関係などを捉える教材として効果的でした。
WEBページ活用と今後の学習について
WEBページは児童が学習のまとめとして映像を活用する、教師が解説しながら紹介することを想定して作成しました。小学校を対象とした「理科教育のあゆみ」という冊子で広報し、今後は「北部教育研究会(指導力等を高め合うこと等を目的に当地域の教員で構成している部会)」を通じて、多くの教員の参考となるよう紹介や活用を促していきたいと思います。皆様からの様々なご意見を頂きながら、将来的には中学校の授業でも活用できるように改善していきたいと思っています。
本来ならば、直接川へ行くなどの体験学習が重要と考えます。河川教育を行うことで、子ども達の生活に最も近い「飲み水」につながります。その水はどこからやってくるのか?うやって巡っているのかという「水循環」に気付くことは大切な学びだと感じています。実際、ドローン画像の映像を見た児童の中には「あそこの石はつるつるしていたね」と過去に訪れた沢登りの経験とリンクさせていました。
学校として気軽に川に行くということは立地的にも規模的にも難しい状況です。川に行く場合は安全面を考え、より多くの教師が引率する必要がありますが、実際には教員の数は十分ではありません。川に関する学習はしたくてもできないのが現状です。
今回は理科の授業と関連させて河川教育を行うために教材開発を実践しましたが、本校の年間指導計画に位置付けることで、WEBページの利用を続けていきたいと思います。
前田校長先生の想い
「間接体験」や「擬似体験」の機会が圧倒的に多くなった今、ヒト・モノや実社会に実際に触れ、かかわり合う「直接体験」を増やしていきたいと考えます。ましてや、遠藤教諭が今回開発し授業実践した教材については、川幅や水流、川石の形や感覚等、児童に直接体験させることで、より五感を通じて実感として学べるものと捉えます。
しかし、天気等を踏まえ指導最適日を設定する難しさ、現地へ行き体験する指導時数の確保、安全面への配慮事項、移動経費等といった様々な制約から、直接体験を主に実践することには難しさがあります。
間接体験ではあるものの、より実感を持たせて学習を展開したい。そのような思いを、今回の実践のみならず、多くの教員が日常的に抱いていると認識しています。
今回の遠藤教諭の教材は、理科の実践に留まることなく、多くの教員が抱く‶ より実感を持たせて学習を″との思いに対して、「工夫の仕方」を気付かせる価値もあったと感じています。
独自のカリキュラムの継承
学校は人事異動により年度毎に教員が入れ替わります。本校も、例外ではありません。
古川第一小学校では年間指導計画という一冊のファイルがあります。
これに細かな指導計画が記録されており、その年度が終わった頃には、改善点などが追加されていきます。このファイルを通して学校で行われた新たなプログラムも上手く引き継がれていく役割を果たしているのだと思います。今回の教材についても、授業そのもので再び活用したりする等、本校においても活用していきたいと考えております。
最近の取り組み
昨年度に引き続き、5・6年生の理科において、作成したWEB サイトを活用して授業を行っています。今年度は新たに、4年生社会科の「水はどこから」という単元で、水源について考える授業の際に、私たちの江合川の上流はどのようになっているのか、ドローンの映像で確認しました。班ごとにタブレット端末を与え、自由にWEB サイト内を調べることで、主体的に川の上流(水源)について調べることができました。
(写真左)
遠藤 拓海 Takumi ENDO
古川第一小学校 教諭
宮城県大崎市出身
古川第一小学校4年目。
令和元年度6年生担当教諭。理科主任。
(写真中央)
前田 正 Tadashi MAEDA
古川第一小学校 校長
宮城県気仙沼市出身
平成31 年度より古川第一小学校へ。
(写真右)
熊谷 俊祐 Shunsuke KUMAGAI
古川第一小学校 教務主任
宮城県大郷町出身
古川第一小学校9年目。
令和元年度5・6年理科専科
大崎市立古川第一小学校
明治 6 年 5 月 極楽寺に大柿小学校設立(現在 開校147 年)
24 年 7 月 古川町立古川尋常高等小学校と改称
昭和 34 年 10 月 米倉小学校を統合し古川第一小学校と改称
平成 16 年 10 月 文部科学省指定「学力向上フロンティア事業」公開研究会(2年次)
19 年 9 月 文部科学省指定「確かな学力育成のための実践研究事業」公開研究会(3年次)
23 年 3 月 東日本大震災により、南北校舎大破・解体
24 年 1 月 大崎市教委・大崎教研共催 学習指導自主公開研究会(1年次)
24 年 11 月 大崎市教委・大崎教研共催 学習指導自主公開研究会(2年次)
25 年 7 月 新校舎完成
26 年 1 月 宮城県教委指定 学力向上指定校事業 学習指導(国語)公開研究会(1年次)
26 年 11 月 宮城県教委指定 学力向上指定校事業 学習指導(国語)公開研究会(2年次)
27 年 11 月 宮城県教委指定 学力向上指定校事業 学習指導(国語)公開研究会(3年次)
28 年 11 月 大崎市教委・大崎教研共催 道徳:自主公開研究会(1年次)
29 年 11 月 宮城県教委指定「 豊かな心を育む研究指定校事業」道徳:公開研究会(2年次)
30 年 11 月 宮城県教委指定「 豊かな心を育む研究指定校事業」道徳:公開研究会(3年次)
令和 2 年 1 月 宮城県教委指定「 学力向上指定校事業」算数:公開研究会(1年次)