【河川基金からのお知らせ】

みんなが「主役」でがんばろ会

2016/04/21 事例紹介

次世代のためにがんばろ会(熊本県) 代表 松浦 ゆかり さん


 

気がつけば大きな広がりに


 八代市環境基本計画の策定委員の有志たちが、実際の活動を通してこれからの世代を担う子どもたちを育成し「身近な川や自然を守る人づくり」をしたいとの思いから平成13年に発足し、現在まで八代市の環境保全のために努力してきました。
 会の発足当初は、環境出前授業をすることがメインでしたが、一緒にやっていた顧問の先生から牡蠣殻を使った水質浄化をしてみないかとの話があり、会が発足した翌年から「牡蠣殻を利用した河川水質浄化活動」を行うことになりました。初めは水質浄化活動で始まりましたが、活動を通じて川のゴミが気になりだし、浜辺のゴミが気になり、その原因は何だろうかと考えさせられました。人間の捨てたゴミが、川から海に流れ着いたものだということを見せて啓発していかないといけない。それがきっかけとなり「河川浜辺の大掃除大会」が始まりました。ちょうど企画をした時に八代市の職員と話す機会があり、ゴミ拾いの話をしたら、市と一緒に河川浜辺の大掃除会を行うことになり、その活動を地方新聞社が取り上げてくれました。それを見た県事務所が一緒にやりたいと、話がどんどん広がって始まったのが「子どもゴミパトロール隊」です。今では年間を通して、実施するイベントの数もかなり増えました。国土交通省の事務所も参加するようになり、国、県、市役所と合同でやっている感じです。
 

互いの顔が見えることで生まれる新たな事業や連携


 発足当初から、官(八代市役所)、学(八代高専)、民(がんばろ会)が協同で立ち上げた会ですが、日頃から、地域に入り込んで様々な活動を進めている会員の繋がりで人と人とが繋がっていて、その人の繋がりでお互いに活動の依頼が恙つつがな無くできています。
 官・学・民・産が協働で事業を実施することにより、それぞれの主体が得意とする分野を担当することによって、より高い効果を出していると思います。例えば、行政においては、地元との調整や広報、活動にかかる会場の確保や書類作成手続きのアドバイスを頂いています。教育機関は児童・生徒の参加の取りまとめだけでなく、先生方の専門的な知見によるアドバイスや継続的なフォローアップ研究を担っており、当会の活動をより深く専門的なものにして頂いています。民間においては、当会に限らず、同じ八代地域で様々な活動を行う市民団体が川遊びや食事のサポートを担って、そこで提供される手料理は参加者の楽しみとして欠かすことのできないものとなっています。地元企業も教材素材、マンパワー、体験・展示ブースの提供等を準備からイベントの当日までサポート頂いています。これらの協力を取りまとめ、かつ、事業を通して各主体を内外へアピールしていることがこれまでの協働に繋がっていると考えています。協力する各主体の顔が見えることで、当会の事業を超えたところで新たな事業や連携が生まれてきます。
 自分の団体だけではなくwin-winの関係が大切です。お互いに成果があり、発展できるような関係を築いていけたら良いと思います。
 

みんなが「主役」であることが継続させる秘訣


 活動を長く継続させるには8つのポイントがあると思います。
(1)地域の力の協調性を生かして、みんなが「主役」であること。人と人との繋がりを地域の繋がりにして広げて行くことが重要かと思っています。
(2)会員の得意分野を任せて、責任を持たせること。各個人を信頼して任せることで、それぞれの個性が発揮でき、場数を踏むことで人として育ちます。
(3)他の団体との細やかな連絡と配慮、そして感謝の心を忘れないこと。頼んだことが済んだら、必ず足を運んでお礼を言うように心がけ、顔の見える関係を大切にしています。
(4)マンネリ化していく活動を、いつも発展させワクワクする企画を行うこと。毎年同じ活動の繰り返しにはしたくないという気持ちがあるので、一つのイベントを行いながら、常に次回(改善点)を想定しています。
(5)情報発信を常に行い、また情報収集かつ日々勉強すること。その際に自分(会)のことをアピールすることも必要ですが、他の協力団体もアピールしあうことが大事です。
(6)官・学・民・産の連携を図ること。行政や学識経験者の意見を聞き、世の中の動きを常に観察すること。この連携が、活動の広がりや継続にとって最も大切だと思います。
(7)世代間交流をしながら若い世代を育てていくこと。若者を巻き込んだ企画・実行を進めることは地域の後継者育成にもなります。
(8)結果を重視するのではなく、それまでのプロセスと繋がりを大切にすること。反省点も次へ活かす。プラス思考で常に前進すること(マイナス面は考えない)、自分から積極的に動くことを心がけています。今では、私が動き回るのを見て、行政も含め周りの皆さんが暖かくフォローしてくださっています。
 

満足感が、人の輪の広がりと参加意欲の向上に


 若いメンバーの中には高校生の時から参加し、大学生になったら大学会員になり、就職したら正会員になった人もいます。会員ではなくても、当日スタッフとして参加してくれればいいと考えています。スタッフとしての役割を持たせることで、活動も楽しく充実するし、また次回への参加に繋がるものと思います。参加だけではつまらないと思います。
 八代市のホームページで会の紹介・活動を見てくれて、大学の先生から授業に使用したいと依頼があったり、その先生が学生を連れてきて活動に参加したり。さらにその学生がリピーターとなって友達と一緒に参加するなどの広がりもあります。また、地内の各高校生に参加して貰うために、足で高校へ出向きお願いしますが、終了後には参加高校へお礼状と参加証明証を手持ちで持参し、担当教諭の顔を見て対話することにしています。これが、次回への参加意欲に繋がっていくのだと思います。
 

ボランティア活動と活動資金の確保


 会員は全てボランティアで活動をしていますが、自らの時間・体力は勿論、資料作成・印刷などの金銭的なものを提供し続けていましたが、河川財団の助成金のお陰で川の学習会のライフジャケットや、教材備品、文房具類など資金を大切に使用できることを嬉しく思います。特に最近は、球磨川流域に点在する学校間の交流や意見交換活動を進めており、各地から児童・生徒が集まるための会場や送迎用のバスを確保する必要があります。保険にも入らないといけない。こういったものに助成金を活用したいと考えています。
 ただ、教育関係・行政関係との打合せ・資料印刷など、個人の持ち出しは厳しいものがあります。イベントは休日開催なので平日に準備しますが、特に若い世代の会員は、平日の昼間のボランティアは無理な人が多く、会を辞めた人もいる状況です。また、若い世代の会員を育てたいのですが、助成金から会員の人件費や交通費を多少でも出せれば、気持ち良く頼めることも多いと思います。コピー代やトナー代などの事務費も結構かかります。このような経費の確保は簡単ではありません。
 

見える化した「勲章」が大きな喜びと思い出に


 子どもたちは、きつい!汚い!危険!の3項目を体験させれば達成感を持ち、最後に、美味しい!楽しい!可愛い!を持ってくると絶対印象に残って「来年も行きたい」につながります。楽しいだけではダメ。楽しいだけでは続かないと思います。
 それと見える化ですね。表彰だったり、認定証だったり、ホームページは写真をメインに、子どもの笑顔や感想をアピールしてあげるとそれが勲章だったりする。子どもたちにとって大きな喜びや思い出になります。
 子どもが喜ぶ姿を見ることができる、喜ぶ企画を考えるのが一番楽しい。イベントをやりながら、新しいことを3つくらい考えていますよ。(笑)
 次世代を担う子供たちのため、お互いに頑張りましょう!




 
「次世代のためにがんばろ会」における取り組み

2001 年発足。会の趣旨は“Think Globally, Act Locally”( 考えは地球規模であるが、まずは身近なところから行動! )。牡蠣の殻を使用した水質浄化から活動をスタート。山・川・海をフィールドとした様々な環境教育・啓発活動を展開。
すべての活動において、官・学・民・産の連携を図りつつ、地域の多くの団体と“ もやい”(互いに力を合わせる)の精神で活動を実践。
2014 年国土交通省の「河川協力団体」指定。2015 年「熊本県ユネスコ協会」会員登録。
主な受賞:2007 年「くまもと環境賞」(熊本県)、2008 年「地域環境保全功労者環境大臣賞」(環境省)、2013 年「くまもと環境大賞」(熊本県)、2012 年・2014 年・2015 年「河川基金助成事業優秀成果表彰」(公財: 河川財団。

松浦 ゆかり Yukari MATSUURA

次世代のためにがんばろ会 代表理事
1958 年熊本県八代市生まれ。1992 年当時5歳の三男を横断歩道で、前方不注意の車による交通事故で亡くしたのをきっかけにボランティア活動を開始。いろいろな人たちと知り合ううちに環境問題に取り組み、2000 年八代市が募集した市民環境研究委員に就任。2001 年委員有志とともに「次世代のためにがんばろ会」を設立。環境カウンセラー、子どもエコクラブサポーター、熊本県地域環境温暖化防止活動推進委員なども務める。

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