【河川基金からのお知らせ】

地域のことを知り八代を自慢できる人になってほしい

次世代のためにがんばろ会(熊本県)

広大な干潟が河口にひろがる球磨川の流れを擁する熊本県八代の地に深く根ざしながら、「水」をキーワードとしたさまざまな活動を行っている環境ボランティア
グループ「次世代のためにがんばろ会」。23 年目に入る活動の中で、次代を担う若い力の育成に精力的に取り組まれています。中でも特に注目されているのが令
和3 年に会の傘下に発足した「エコユースやつしろ(以下、エコユースと表記)」です。高校生を中心に構成する「エコユース」と会の活動について、代表理事の松浦ゆかりさんに伺います。

SDGs 未来キャンプ in 長崎』でのワークショップ。(写真左端が「次世代のためにがんばろ会」代表理事 松浦ゆかりさん)


違う高校や学年の子との交流から学びがある

私たち『次世代のためにがんばろ会』が発足当初に力を入れていたのが『カキ殻まつり』で、カキの殻を使った河川浄化活動です。最初は地域の子どもと20人くらいで活動していました。結構大変で、私たちだけでは体がもたないくらい。その頃ちょうど出前授業を頼まれていた八代工業高校のラグビー

部の先生に「カキ殻を運ぶのを手伝ってほしい」と頼んだら、「喜んで行きます」と高校生が五、六十人来てくれたんです。他の学校にも応援を頼むと、二、三十人がボランティアで来てくれたのですが、それが3年目から「他校が100人ならうちは学年全部出します」と競い合いのようになり、多い時は800人が参加してくれました。助成金の大半は高校生を運ぶバス代に使ってしまったこともありましたね(苦笑)。年々人が増えて、結局あぶれる子が出てきてしまったので、10周年を機にこの活動をやめようと決め、各高校にお礼の手紙を出して終わりにした

つもりでしたが、新学期に先生が代わると「今年の『カキ殻まつり』はいつですか?」と問い合わせがくるんです。そこで、浜辺のごみ拾い活動も毎年開催していたので、「河川と浜辺の清掃をやりますがいかがですか?」と申したら、今度はこちらの参加者がどんどん増えて、結局700人態勢になりました。これが『八代海 河川・浜辺の大そうじ大会』です。環境ボランティアは高校生には楽しいようです。高校で別れた中学校の時の同級生にまた会えるのも楽しいと言っていました。

大そうじ大会』に活動が変わってから、朝早く来る子が何人かいたんです。

その子たちはテント張りも、片付けも最後まで残ってしてくれる。「僕たち、スタッフで参加したいんです」と言うんです。運営をしてみたい高校生がいるんです。企画とか仕切りとか、自分で何かをやりたい子が何人もいます。私たちも世代交代を考えていて、地域のことを知った上で運営できる子を増やしてみたい。『大そうじ大会』の運営も私たちではなく、高校生に仕切ってもらうようにしてみたいという気持ちがありました。

また、『アジア・太平洋水サミット』(第4回、令和4年4月23、24日 熊本城ホール)が

開催されるのに合わせ、その会場で発表ができる子を育てよう! そのために青少年チームをつくろう! ということで、八代市内の高校生を対象に募集をかけたら、20人が登録してきました。それから約1年間、地元のことを知るためにフィールドでの体験活動や、専門家の講演を聞いて、地元の良さをアピールできる人材教育をしていくことが「エコユース」の始まりです。そして『アジア・

太平洋水サミット』で発表ができる態勢をつくり、当日は見事に発表をしてくれました。

今、「エコユース」には3期生までの62人がいます。毎年平均20名ずつ増え

ていますね。1期生は『アジア・太平洋水サミット』に向けて入ってきた子たちで、大学生が8人、そのまま継続で入っています。1期生には、実は大学のAO試験、面接対

策で来た子もいました。毎年3月に、1年の総まとめとした成果発表会をする

のですが、そこで「僕は最初、受験目的で入りましたが、違う学校の友だちもで

き、今は楽しくてしょうがないです」と言っていました。5つの別々の高校から

きた子たちですが、ものすごく仲がいいんですよ。絆ができています。「『エコユー

ス』のおかげです」って言ってくれました。自分のまわりしか見ていない、同じ高校の中にしか交流のなかった子には特に刺激になるようです。違う高校や学年の子と交わる。最初はやはりぎく

しゃくしているけれど、最後はすごく仲良くなっています。「同じ釜の飯」という感じでしょうか。いろいろと学びがあるみたいです。「エコユース」のいいところはそこだといつも言われます。

今年行われた『八代海 河川・浜辺の大そう
じ大会』の告知

どういう体験をして どう自分が変わったか振り返り

『アジア・太平洋水サミット』では、外国の人や偉い人が来ると、話したい

のに一歩が踏み出せない子が何人もいました。私がどんと背中を押して「自分の活動を聞いてくださいって、とにかく連れておいで」って発表をさせたんです。2日ある会期の1日目と2日目ではぜんぜん違いました。自分から誘いに行って連れてきて話をしている。みんな最後は上手に話していました。やらせてみると案外できるものです。

「私たちが後ろにいるから失敗してもいいよ」といいながらも、任せることがいちばんかなと思います。体験は大事です。この7月に『SDGs 未来キャンプin長崎』(7月15、16日)に行った子を2人、ラジオに出したんです。そうしたら「ものすごく意識が変わりました」「今まで川とか水とか考えたこともなかったけれど、これからは絶対参加します」って言っていました。やはり現場へ連れて行って、見せて、感じさせると違います。他の学校の子と交流したので「わあ、同じ高校生でこんなに考えてるんだ」と。「僕ももうちょっとしっかりしなくちゃ」とも言っていましたね。

みんなが主役なので、活動に参加した子たちを必ず壇上に出すことを心掛けています。発表や会議が終わったあとは必ずいつも地元のラジオ局に出します。

「エコユース」の宣伝のためだと今年行われた『八代海 河川・浜辺の大そうじ大会』の告知

16会員の親戚に造り酒屋の社長さんがいて、焼酎屋さんなんですが、令和2 年7 月豪雨でお店が流されて、その社長さんは電信柱の上で一命をとりとめたという人なんです。

被災直後に支援物資を持って行ったんです。そしたら「樽は助かって焼酎はあるんですよ。買ってください」と言われて。「それじゃ300 本持ってきて」って、私たちの会において。メールであちこちに「買って。買って。買って」と言ったら300 本がすぐ売れました。「おいしかったからまた買いたい」という人まで出てきたので、「私は酒屋じゃないですから」って近所の酒屋さんを紹介してそこに卸して売ってもらうようにしました。球磨地方の酒を八代の人が買うというルートを作りました。みんなから「何やってるの」と言われます。私たちも「何やってるんでしょうね」と言いながら年中何かやっています(笑)。

頼まれたらいやと言えない性格の人が私の会には何人もいるんです(笑)。

思っているようなので、「あなたたちの振り返り勉強なのよ」って言うんです。なぜその活動に参加して、どういう体験をして、誰としゃべって、どういうふうに自分が変わったか、振り返りをす

る。それをしていないとラジオに出た時にしゃべれないでしょうと。だから家で復習してきたでしょう。何のためにラジオに出るかというのはそこなのよと。音とか風とか感じたでしょう、それを話せばいいんですよって言うんです。

 講演会にはいつもプロしか呼びません

先入観や思い込みを持ってはいけないよといつも言っています。人の話を聞

いて影響されても、思い込みで判断せずに、この人の話あの人の話、いろいろな話を聞いた上で、さらに自分で情報を探しに行ってくださいと。いまインターネットがあるけれども間違いも多いから、確認して自分のものにして、それから発表してくださいと言っています。

これから成果発表会や11月には『青少年水サミット』もありますが、必ず自分で調べてきてください。それを、自信をもって言える段階までもっていってから発表してくださいと言っています。

場数を踏ませる。体験させる。発表する前に必ず熟考して自分のものにして発表する。先入観や思い込みは持たないこと。この人の意見はすごいと思っても、自分の調べたことと違うところ

はないか確認する。あの人が言っていたからではなくて自分で考えて判断す

るようにと言っています。また、感想を聞かれて「楽しかったです」「うれしかったです」だけは言わ

ないこととしています。「先生の話から私はこういうことを学びました。だから今日は自己研鑽になりました」。そんなふうに言いなさいねって言っています。

「エコユース」での講演会とか講習会やワークショップには、必ずプロをひとり入れるようにしています。専門分野の先生をどんどん招聘します。だから助成金はたいてい講師代に使いま

すが、それでいいと思っています。高校生に「私はいつもプロしか呼びません」って言うんです。本当に詳しい人、この人はすごいなという先生しか呼びません。「本当のプロなんだから

もったいないよ。お金にかえられない、分野のトップクラスの話が聞けるんだからね。ここまで来てくださるプロの先生なんていないんだからね」って言います。だからでしょうか、一度話を聞いた子は次も来ますね。次はどんな先生の話が聞けるだろうかって。

八代のことを日本各地で自慢してください

令和2年7月豪雨の球磨川の災害地を見たことがないという「エコユース」のメンバーが多かったので八代河川国道事務所のコーディネートで企画しているのが『水防災歴史見学会』(9月24日)

です。バスで球磨川沿いのポイントをまわります。まだ橋脚がなくなっている

ところが2、3か所あるから、そこを見せに行こうと思っています。こんなに大

変なことになっていたんだよって。復興が進んでいるので、災害地の状況を見

せるには今しかないんです。多くの人が一生懸命復興しているところを見せ

て、国交省の方々から同じ災害が起きないためにどういう対策を行っているのかを説明してもらおうと思っています。私、「エコユース」入会時に必ず「みなさんは八代市が好きですか? 誇り

に思いますか? 手を挙げてください」と聞くんですけど、誰も手を挙げな

いんですよ。だから、まず八代のことを知って自慢できる人になってくださ

いって言います。日本各地に行って八代のことを自慢してくださいって。何

もない田舎だなんて絶対言わないでよって。本当にすばらしい土地で、食べ物も豊富だし、県で一、二の歴史があるんですよって。最後の成果発表会のときは、「八代のことがわかって好きに

なりました」「誇りに思います」ってみんな言うんですよ。ああ、変わったなあって思います。

『SDGs 未来キャンプin 長崎』で発表する「エコユース」のメンバー。

プロフィール

次世代のためにがんばろ会(熊本県)

「次世代のためにがんばろ会」は平成13 年発足(今年で23 年)。「次世代の子供達が健康で安全な生活を送れるように」をコンセプトに、水・生きもの・地球環境をめぐるさまざまな地域活動を展開中。詳しい活動についてはhttps://www.ganbarokai.net/

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