【河川基金からのお知らせ】

河川教育で培う豊かな表現力

2017/04/24 事例紹介

宇城市立海東小学校(熊本県) 教頭 鶴田 るみ子 さん  教諭 那須 亮作 さん


 

河川教育の導入のきっかけや経緯


 本校での河川教育の取り組みは、平成26年度から始まり、今年度で3年目になります。
 最初は、宇城市からESD(持続発展教育)の推進校としての指定を頂き、それに伴って平成24度にユネスコスクールに登録しました。しかしその後の2年間、環境教育を中心に取り組んでいこう としましたが、なかなか核となるようなテーマや素材が見つからず、具体的な取組みができませんでした。ESD推進校の指定を受けた当初は、ESDが何たるかを教師もあまり理解しておらず、何を取っ掛かりにしていけば良いのかというきっかけがなかなか掴めませんでした。
 そこで、何か活動の中心になるものをと考えたときに、学校のすぐ近くを流れる砂川を使った学習ができるのではないかと気づき、それに取り組んでみることにしました。その際にちょうど、当時の教頭が河川財団の河川基金を見つけて、河川基金の助成にも申請をしました。
 

学校教育における河川教育の位置づけ


 本校では、最初の導入時点から、1年から6年までの全学年を対象として取り組んでいます。ESD推進校としての取り組みをしなくてはいけない状況にあったことから、やるのであれば最初から全学年でやってみようという考えが基本にありました。
 もともと本校では、3年生ではショウガ栽培をしたり、5年生では米づくりや熊本県全体の取組である水俣についての学習をしたりといったように、水や川に関連した学習を幾つか行ってきていました。そこで河川教育を行うにあたっては、これらの既存の学習を組み立て直して、川に繋いでいったという感じでした。
 全く新しい取り組みとして行ったのは、ライフジャケットを購入して川での体験活動を取り入れたことくらいでしょうか。もともと、海東小学校には川や水に関係した既存の活動があったことが、最初から全学年で取り組めた大きな理由なのかも知れません。
 

教科横断的(クロスカリキュラム)な学習


 全学年を対象にプログラムを作っていますが、1・2年生では生活科を、3年生以上では総合的な学習の時間を中心に取り組んでいます。これを軸として、 1年生では図工科、4 ・5年生では社会科、6年生では理科と特に強く関連させながら取り組んでいます。
 例えば1年生の図工科では、造形活動として砂場で山や川をつくります。その時に造形を学ぶととともに、水と触れ合う感覚や楽しさを感じさせます。また4年生の社会科では、水道の学習や郷土について調べる学習に関連させて、地域の水(水源や砂川)やホタルについて学んでいます。5年でも社会科での環境を守る工夫や産業における水の大切さを合わせて学んでいます。6年生では、砂川の源流から河口までの水の動きや循環、地形・地質を調べる学習を理科で行い、それに関連付けて、海東の土地の成り立ちまで探っています。
 そのほか、 3年生のショウガ栽培(海東の名産であるショウガ栽培や調べ学習を通じて、水の必要性や恵み、砂川との関係、土壌などについて学ぶもの)、5年生の米づくり、PTA行事として全校で行っている「ホタル鑑賞会」、熊本県内の全ての小学 5 年生が水俣に出かけて環境学習を行う熊本県事業「水俣に学ぶ肥後っ子教室」といった様々な活動・学校行事とも密接に関連させながら取り組んでいます。
 初年度である平成 26 年に河川学習のプログラムを作る際、せっかく取り組むならば全学年の繋がりを考え、全体で取り組めるような無理のない活動にしたいと考えました。最初の年度は、地域の素材を優先してつくったプログラムでしたが、児童の学びの実態や状況に応じて少しずつ変化させながら取り組んでいます。
 ちなみに現在は、低学年では「水の気持ちよさを体験する学習」、中学年では「水や川に関わる調べ学習」、高学年では「水や川を分析的に見る実験的 、課題解決的学習」を行うことを目標に、全学年を通じて繋がりや系統性を持たせるように意識をしています。
 

子供たちの変容や教育効果


 本校はここ数年、国語科の授業改善を通して子供たちの表現力育成に力を入れています。ESD推進校の指定を受けた際に、国語科の授業改善とESD的な体験活動をリンクして取り組むことで、表現力の育成と表現する場の確保ができないかと考えてきました。
 まだ3年目ということもあり、河川教育だけでの子供たちの変容については、定量的な分析はできていません。しかし、例えば6年生の国語科で地域のコミュニティーデザインを考える際に、水のきれいさや環境の豊かさに着目することができるようになるといった、意識面での変容が見えるようになってきました。子供たちの会話の中からも、環境、水、川といったものへの意識が高まっていることを感じています。
 また体験活動と国語科で培った豊かな表現力を、実際のコミュニケーションの中で表現することができるようになってきました。実際に、各学年の国語科の学力調査結果は改善しつつあります。
 

教師の異動への対応や、外部からの支援


 教師の異動については、不安はあります。しかし、今のメンバーによる取り組みが、仮に異動があっても引き続き継続してゆけるよう、指導計画などの資料を学校内で蓄積し共有していくことが大切だと思います。また本校の教師が異動することによって、河川教育に関するノウハウやスキルが他の学校にも広がっていき、河川教育の普及につながっていくと良いのではないでしょうか。
 河川についての教師の知識やスキルの向上も課題ですが、地域には長くそこで生活や活動をしている方や市民団体もいらっしゃいますので、そのような方々の知識や経験を活用することもできます。また県庁や地域振興局からの、専門家による出前授業を積極的に活用することで、より気軽に無理なく取り組むこともできると思います。
 本校では、毎年、県庁などからの出前授業をお願いしています。このような専門家の知識や経験を、出前授業のような形で積極的に活用することが大切だと思います。
 

先生の専門性も活かした、河川教育の展開


 私(那須先生)は県庁の環境立県推進課に出向した経験があることから、水環境の保全については、興味と自信を持って取り組むことができました。また例えば昨年などは、校長と教頭が理科の専門で、地層や岩石の学習と関連づけて取り組むこともできました。
 それぞれの先生の専門的な知識や興味も活用しながら、各学年が独自の切口や視点をもって取り組みを展開することができると良いと思います。
 

子供たちの変化が、家庭、地域にも拡がっていく


 子供たちは河川学習を通して、特に環境への関心を強く持つようになってきています。例えば、地下水が水道水源の80%を占める熊本県にとっては、節水を行うことや、汚れを出さないことがとても大切なことを知っています。
 しかし、その実践のためには家庭や地域をもっと巻き込んでいく必要があり、そのための学校や子供たちからの発信の方法を考えていく必要があります。
 表現力の育成にしても、環境に配慮した態度にしても、まずは子供たちを変えることが最初であり、そこから家庭に拡がり、地域に拡がっていく。そして最終的には、校区全体が持続可能な社会となることを目指して、今後も取り組んでいきたいと考えています。






 
宇城市立海東小学校での河川教育の取り組み

海東小学校では、学校の校区内を流れる二級河川・砂川を主な題材として、「ふるさとの川に学ぼう~すばらしい水環境は海東から」をキャッチフレーズに、平成26年度から全校体制での河川教育プログラムの実践に取組んでいます。多様な生き物が棲息する砂川のよさを再確認して地元地域への愛着を深めるとともに、河川水質調査やホタルの生態調べ、水俣公害の歴史など、各学年における児童の発達段階に応じた様々な調べ学習・探求的な学習を系統立て、全学年にわたる河川教育の学習プログラムを実践することにより、「自分の思いや考えを持ち、進んで表現できる子供の育成」を目指しています。

(写真左)鶴田 るみ子 Rumiko TSURUDA

宇城市立海東小学校 教頭 2014年から海東小学校に勤務。大学では、雲仙天草に分布する火砕流堆積物について卒業研究を行った。小学校に赴任してからは、理科で地域の自然を教材化することに取り組んでいる。2015年度には地域の地質と土壌、地域産業について関連づける学習を試みている。

(写真右)那須 亮作 Ryosaku NASU

宇城市立海東小学校 教諭 2012年より海東小学校において、環境教育並びにESD推進の担当として勤務する。2013年には、熊本県庁環境立県推進課に出向し、県の水環境行政に携わる。2014年から再び海東小学校のESD担当、研究主任として、河川学習を中心とした環境学習と国語科の両輪で持続可能な社会の形成者の育成の研究に取り組む。