【河川基金からのお知らせ】

広瀬川が繋ぐ、人・環境・教育・未来

2016/09/23 事例紹介

カワラバン(宮城県) 代表 菅原 正徳 さん


 

第二の故郷仙台で、河川を主体とした環境教育を実践


 高校を卒業するまで実家で過ごした18年間よりも、仙台での生活の方が長くなりました。宮城県北部の農家に生まれ、小学生のころから季節毎の農作業を手伝ってきたので、自然は身近というよりも生活の一部として成長しました。
 そして、何よりも家のすぐ目の前を流れる川での「釣り」が、私の原体験であり、母からは、「3才の時には釣竿を持っていた」と言われました。
 このような背景もあり、建築関係を学んでいた学生時代から環境に携わる仕事に就きたいと考え2002年に大学を卒業しました。当時は今ほど企業のCSRが活発ではなく、また情報も限られていたので、すぐに仕事を見つけることはできませんでした。
 しかし運良く、環境活動を実践している「NPO法人水・環境ネット東北」と巡り会い、そこで親子向け自然体験などのボランティアスタッフとして関わり、一年後には職員となり2010年までの8年間、環境教育や自然体験、市民向けワークショップの企画運営等に従事しました。この「NPO法人水・環境ネット東北」に在籍した期間に生まれた教育関係者や多くの市民団体、企業等の人々とのつながりが現在の活動の礎となっています。
 独立する前年には延べで年間2000名を超える児童等に対して、川での環境学習を提供するまでになりました。そして、2011年1月に「NPO法人水・環境ネット東北」からその分野を引き継ぐ形で「カワラバン」を立ち上げました。
 その直後の3月11日の東日本大震災があり、「もう誰も川に行かなくなるのでは」と心配した日々もありましたが、それまでに培った実績と人脈を活かし何とか現在まで活動を続けてきています。
 

広瀬川が繋ぐ様々な試み


 現在の活動の中心となっているのが、幼稚園や学校などで行われている環境学習の支援です。
 仙台市では教育機関が外部講師を招いて環境学習をする際に経費を支援する制度があります。市では環境団体等が指導・実践できる様々なプログラムを冊子化して各学校に配布します。学校はこの中から理科などの教科学習や総合的な学習の時間のテーマに合ったものを抽出・選定し、市の担当窓口に実施依頼の申込みをします。
 カワラバンでは、川の環境を学ぶプログラムや川の体験プログラム、水防災等のプログラムなどを毎年度掲載してもらっています。
 他に例のない非常に優れた制度となっていますが、学校からの申込みが増加傾向にあり、予算上から全ての学校のリクエストに応えられなくなってきていることや、この制度自体がいつまでも続くとは限らないので、その際の財源をどうするかを心配しています。
 昨年の出前講座、川での体験活動の支援実績は、66回実施し延べ3500人以上の児童等を対象としました。土日祝祭日に行った市民センター等での講座や主催事業の参加者を含めるともっと人数は多くなります。

 また、地元企業や団体等125社加入している「広瀬川1万人プロジェクト実行委員会」の事務局を担い事務局長として運営を行っています。年2回(春・秋)広瀬川流域13会場(春は5会場)のゴミ拾いを主な活動としています。
 仙台市のシンボル・広瀬川というイメージが先行し、大勢の市民に親しまれている印象ですが、実際には川に足を運ぶ人は少ないという現状があり、川に目を向け関心を持ってもらうために川へ誘い実際に触れるツールとしての清掃活動となっています。清掃活動への参加をきっかけに広瀬川の魅力を発見しさらに親しんでもらえればとの思いで運営を行なっています。
 このプロジェクトが始まったばかりの頃は、秋のみの開催で参加者も300名程度でしたが、現在では春と秋を合わせると2500名を超える規模になりました。今後の目標は清掃会場を増やして1万人規模の市民が参加する流域一斉清掃を目標としています。
 そのためには、各会場のとりまとめをする担い手を育成することが課題となっており、流域内の町内会や学校、大学、企業との連携をさらに強める取り組みについて常日頃から考えて活動しています。
 さらに、日頃から培ってきた学校等とのつながりも生かして徐々に増やしていきたいと考えています。
 

広瀬川への疑問からはじまった助成事業


 活動を継続していくために河川財団の基金も含めいくつか助成をいただいており、河川基金では魚類に電波発信機をつけた市民参加型追跡調査を行なっています。
 関東などの河川では冬でもオイカワ等の釣りが行われているようですが、広瀬川では12月を過ぎると川から生き物がほとんど居なくなります。定説では、冬場は深い淵のそこでじっとしていると言われているので、めぼしいポイントを水中カメラで撮影してみましたが、魚の気配は感じることはできませんでした。
 このことから、魚などは湧水などで水温が安定したポイントで様々な魚が越冬していると考えましたが、中規模河川である広瀬川ではそのようなポイントが数多くあるとは思えません。
 また、近年は温暖化等の影響で渇水と豪雨のリスクが高まってきています。これからは洪水で越冬や越夏をする環境が消失したり、また洪水被害が増えれば河川改修等で重要な環境が失われたりすることが懸念されています。
 そこで河川を魚類がどのように移動・利用しているかを明らかにすることで、河川行政等に対して保全に向けた提言をすることを目指して、この市民参加型追跡調査の取組みをはじめました。
 具体的には、魚類が年間を通じて広瀬川をどのように移動・利用しているかを調べるため、釣り上げた魚に電波発信機を付けて入れて再放流し、アンテナを持ってその電波を受信し生息場所を確認するという調査です。発信機が大きいほど発信する電波も大きくて受信しやすく電池の寿命も長くなりますが、今回は1.5センチくらいのものを使っています。
 この発信機を付ける事が可能な大きさの魚は限られていて、鯉や鱒が先ず考えられますが、鱒は産卵後に死んでしまいますし、鯉だと活動範囲が狭く限られてしまいます。
 広瀬川を広範囲に移動するデータが欲しかったことから、今回はニゴイを選び、発信機も高額なので、今年は3匹で行っています。
 春先に広瀬川でヤマメ釣りをしていると外道としてニゴイが釣れることが多いので、採捕も楽だろうと考えていたのですが、機器の発注の関係で7月からの採捕となってしまいました。この間に産卵を終えたニゴイは春先のように活性が高くなかったので、採捕にはとても苦労しました。協力していただいた市民団体等の皆さんには大変感謝しています。
しかし、3尾目に発信器を取付け、さあ、追跡開始と言う時に、台風7号そして13号まで連続して通過していったので、ニゴイ達は大丈夫かどうか、とても心配しております。
 

やっぱり川が好きなんです


 これまでの活動を通してモチベーションを保っているのは、新しいことを積極的に取り入れ、今まで事業化していないものに挑戦し、日々新しい仕事作りをしているという実感です。
 また、環境教育は人材育成だと考えているので、地域の河川等の環境を学んだ子どもたちが、いつか仕事をするようになった際に環境に配慮したり、地域づくりに繋がる仕事をしたりなど、そんな風に繋がってもらえればいいかなと思っています。
 あと、一番のモチベーションはやっぱり大好きな川に行けることですね。



 
「カワラバン」における取り組み(地元仙台で川を活かした環境教育・体験活動を実践)

仙台を中心として活動する「カワラバン」の菅原正徳さんは、仙台市内を流れる広瀬川や七北田川などをフィールドとして環境教育や様々な体験活動を長年にわたり実践しています。特に、仙台市内の幼稚園や小学校等を中心として学校教育現場と連携し、学校に出向く出前授業とともに、子どもたちを実際に川に誘い体験を通した活動については、毎年数多くの実績を残しています。
活動の内容は、当財団が推進する取組みの一つとなっている「学校教育現場の授業の中に『河川教育』を導入」する先進的な事例ともなるものです。さらに「NPO法人川に学ぶ体験活動協議会」が取り組んでいる学校現場と連携・協働して川を活かし体験を通した河川教育を普及・展開する「学校連携コーディネーター」養成事業の模範的な実践事例として教育関係者からも高く評価されています。

菅原 正徳 Masanori SUGAWARA

NPO法人川に学ぶ体験活動協議会(RAC)トレーナー、同 学校連携コーディネーター、プロジェクトWETエデュケーター、東北工業大学客員研究員

1979年、宮城県栗原市生まれ
2002年、東北工業大学建築学科卒業
2003年、特定非営利活動法人「水環境ネット東北」に入社、2010年に退職
2011年、「カワラバン」を設立し現在に至る